『毎日あきれることばかり』(三木睦子 アートン 2001年)
今日は軽い政治の本について。
著者は故三木武夫元首相夫人。
かつて三木派の「ゴッドマザー」して84才になる現在も健在、のみならず多方面に活躍中で、
つい先日も社民党の辻元清美・前衆院議員による秘書給与流用問題に関して、
社民党擁護のアピールに顔を連ねていた。
自民党の総裁・総理まで務めた政治家の夫人がなぜ社民?
三木氏は保守傍流、自民党左派と言われ、戦後すぐにはロバート・オーエンの協同主義
を標榜する国民協同党党首だった事もある。
1970年代の政治地図で言えば、社会党右派よりも「左」だったかもしれない
(ちなみに社民党の土井たか子党首は三木氏を尊敬する政治家に挙げている)。
ただ夫人は、夫に輪をかけて更に過激で、「なんでいつまでも自民党なんかにいるの?!」と
いつも夫に離党を炊きつけていたそうだ。
三木元首相には参謀役らしい側近がいなかったが、
もしかしたら夫人が1番の参謀だったのかもしれない。
この本は、そんな三木夫人が今の政治への憤懣を綴った、
いわば「毒吐く記」であるが、読むと、護憲、教科書問題、従軍慰安婦、北朝鮮etc、
本当に社民党と同じような事を言っている。
旧三木派関係の議員も閉口しているだろう。
それはどうでもいいが、面白いのは三木氏に関わる回顧部分で、
夫が政権から引きずり降ろされた「三木おろし」には四半世紀経った今でも恨み骨髄だし、
とくに河野洋平の新自由クラブが大嫌いであるようだ。
ロッキード事件を契機に金権体質を批判して自民党を飛び出した河野一派だが、
実際には三木政権を不利に陥るため、裏で反三木派と繋がっていたというのが、
三木夫人の見方である。
これは四十日抗争の時に、新自由クラブが大平・田中派から買収されていた
とする石原慎太郎の証言(『国家なる幻影』)にも符合する。
しかしこの夫人のややいい加減なところは、「秘蔵っ子」の海部俊樹には甚だ甘い事である。
小沢一郎の操り人形化し、クリーン三木の名を辱めた不肖の弟子だと思うのだが、
三木夫人は海部政権当時から最大の擁護者に終始している。
まあ、「身内」に甘いのは誰しも同じか。
でも海部が竹下派に担がれて総理・総裁になる時、三木家に挨拶に行こうとしたが、
金丸に脅かされて慌てて引き返した、という話もあるのだが…。