「ウルトラマン」シリーズのヒーロー役は、その後の俳優人生では悪役を演じる人が
多い。
初代「ウルトラマン」のハヤタ隊員こと黒部進は、すっかり時代劇の悪代官イメージ
が定着している。
「ウルトラセブン」のモロボシ・ダン役の森次浩嗣に至っては、最初はダン役を髣髴
させる善人に見せかけて、実は悪人だったというようなシチュエーションの役柄が
多く、当時、子供心に私なぞは結構、ショックだった。
映画『ああ野麦峠』でも、善良誠実と思わせて実は冷酷非情な製糸工場の若主人役を
演じていた。
勿論それが役の上の話である事はすぐにわかるし、そしてモロボシ・ダンは、
やはり我々の心の中で永遠にモロボシ・ダンである。
10年前に放映されたNHKドラマ「私が愛したウルトラセブン」の中のアンヌの台
詞にあったように。
現在放映中のシリーズ第12作「ウルトラマンコスモス」の主演俳優が
なんと傷害恐喝事件で逮捕され、番組自体も急遽、打ち切りになってしまった。
役の上ではなく、実生活で「悪人」になってしまったのである。
ファンの子供には少なからずショックだろう。
というより、そもそも親が困るのではないか。
突然、何の脈絡もなく終了してしまった事に戸惑う子供から、
「ウルトラマンコスモスはどうしたの?」
と聞かれても、親は答えようがないだろう。
それとも、折角の機会だからこの際に現実を知らしめて、教育の糧にすべきか?
もう40年近い昔になるが、初代「ウルトラマン」の最終回で、
ウルトラマンは「光の国」へ帰って行った。
その放映終了直後、全国の多くの子供たちが窓を開けて夜空に向かって手を振って
ウルトラマンとの別れを惜しんだというエピソードがあるそうだ。
当時まだ健在だった円谷プロの創始者・円谷英二はその話を聞いて
非常に喜んだという。
円谷英二は、怪獣やウルトラマンの着ぐるみから役者が顔を出した写真を
嫌っていた。子供の夢を壊す、と…。
円谷英二が今もありせば、この事件を聞いて何を思うだろうか。