⊂カッターナイフ。⊃
2002年04月09日(火)

じいちゃんの命日が近くて、思い出すと情緒が少し狂ってた。

あたしの部屋にまでなだれ込む程の来客に、目覚め戸惑った日。
弔いの花は庭からはみだし、
あたしにはそれさえも夢のような浮き足感の中だったけれど。
ひとりきりで御葬式らしく、色んな事を思い出してみても。
理解の出来ない死という対象に、どんな風に接するべきかわからない。

みんな泣いてて、あたしはよくわからなかった。
最後まで、ずっと。
みんなあたしを見て、卑しい表情をしていたけれど。
あたしは結局、最後の時まで泣かずにずっと場違いさに足を持て余した。

先生はそんなあたしに可愛げがない、と云って。
じいちゃんの目は最後まであたしの顔を見ることもなく。
どれだけ自分の部屋に逃げても。
ひとはずっと喋り続けた。

家中を見渡せば、いつもあのひとの姿が見えて。
階段を下りる足付きを心配してもみるけれど。
最期までひとりきりだった想いは。
七十年間をあたしの頭にのしかけるばかりで。
時々思い出してみては、あたしきりの憂鬱になる。
死を迎えるという最期の大仕事は、いつも朝に容赦なく。
あたしは未だに理解し切れないまま、あなたの残像を見ています。



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由弥 [御手紙]