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氷砂糖

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財布
2001年11月25日(日)

OLだったころ、年末に、満員電車で、お気に入りの財布をすられたことがある。エンジ色のかわで、表に金の太陽のぼたんがついていて、かちっと開くと、中に銀のお月様のいる、ちょっと変わったデザインのお財布だった。ふだん現金をあまり持ち歩かないのだが、その日に限ってなぜか万札が数枚入っていた。カードも入っていたので、後の処理が非常に面倒くさかった。盗む人にもそれなりの事情はあるのかもしれないので、役に立ったならまあいいか、とも思ったが。

他にもファーストフード店のメンバーズカードだとか、なくて困るものではないがあると楽しいもの、奨学金の返済をした領収書など、お金ではないが重要なものも入っていたので、なんだか非常に虚しく悲しかった。お金が返ってこなくてもいいから、財布本体やお金以外のものを返してほしいなーと思った。そんなことがあるわけもなく、しばらくして別の財布を買ったが、今度は薄紫の、あまりこっていないデザインのものにした。

そういえば、財布を拾ったのもこの時期だ。仕事帰り、飲んだ後か何かで、遅い時間だった。バス道を、酔い覚ましにだらだらと歩いていたら、足元に茶色のかわの財布が落ちていた。広げたら、それなりにお金が入っている。カードもたくさんある。身元のわかるものはないかな、と思ったら、名刺がでてきた。某銀行の、支店長だか専務だか、もう忘れてしまったけれど、それなりに重い位置にあるひとだった。すこし歩いたところに交番があるので、そこへ届けた。

書類作成のため色々聞かれたが、最後にその警察官は、「若い女性がこんな時間に一人歩きをしないように」と諭すのを忘れなかった。数日後、上品な年配の女の人が、水ようかんと、ハンカチを持って家に来たらしい。わたしはその日も仕事で遅く、会えなかったが、受け取った家族は話を聞いていなかった(朝起きたら忘れていた)ので驚いていたらしい。水羊羹は皆で食べて終わったが、そのハンカチはとてもお洒落な感じで、今も愛用している。

年末に向かって、財布をなくすひとや落す人、忘れる人や盗まれる人、は増えるのかもしれない。皆さまもお手回り品には気をつけましょう。



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