stray notes

氷砂糖

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折 鶴
2003年07月31日(木)

帰りの電車で、折り紙で鶴を作っているひとを見た。年は40代後半から50代前半くらい、女性で、眼鏡をかけていて、髪型はパーマがかかったショート。化粧をしてはいるが、口角の下がったくちもと、きびしく冷たい目元、つりあがったまゆにしかめられた額をしていて、全体にひどくいかめしい、何かへの怒りをくすぶらせているような雰囲気があった。が、鶴を折る手は器用にすばやく動き、次々と折鶴ができていく。彼女はしわしわのビニール袋に、できた折鶴を無造作に入れていく。バッグから間断なく折り紙を取り出してはつくる。

ぼうっと眺めながら、ずっと忘れていたことを思い出した。中学のとき、全校で、鶴をたくさん折ったことがあった。同じ学年の違うクラスに、難病にかかっている子がいたのだ。彼女の何度目かの手術のためか、あるいは入院生活の途中でかはわからないけれど、鶴を皆で折っていた。彼女の病名は忘れたけれど、「天使のように優しい子だった」と言われていたのは知っている。一度遠くから見たことがもあった。その頃は視力も普通にあったので、久しぶりに学校に来て、沢山の級友に囲まれた彼女が、実際天からの使いのような、少し浮世離れした雰囲気で、やわらかく微笑んでいたことを覚えている。

結局、千羽鶴の願いはかなわなかった。でも、できあがっていた鶴たちは彼女に届いていたというのは聞いた。喜んでいた、ということも。この、目の前で鶴を折っているおばさんにも、何か事情があるのかな……。祈りがこめられていたのかな。わからないけれど、もしそうなら、かなうといいなと思う(全然違うかもしれないが)。思いながら、わたしは電車を降りた。



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