2002年12月02日(月)<<<love
教室にはいるとまだ人は少なくて、始業のチャイムはまだ5分しないと鳴らない。その5分が、長い。 親友の席には何もなかった、鞄も、スカイブルーとレモンイエローの手編みのマフラーも、本人の後ろ姿も。 私の机には隣のクラスの子が座っていて、前の机に座ってること仲良く話してたから・・・ 「ごめんね、座るでしょ。どくよ」 なんて言葉にもいらだちを感じて、つくり笑顔で「座らないからいいよ」としか言えなかった。 始業チャイムがなる時間まで女子トイレで、何もしてないと変に見られるなんて周りを気にしすぎて、用もないのに携帯をいじくって、チャイムの音にあわてて教室に戻ると親友ももう来ていた。 私は廊下側の端のせきから、窓際の端の席の後ろ姿を「起立、礼、着席。」の号令の間ずっと後ろ姿を見ていた。けれど、親友はこっちを一度も見てくれなかったよね。
その日は1日が長くて、特に休み時間が長くて、寝て過ごしていたよ。 話をする相手はいるけど、うまく調子を合わせようと気を使いすぎて疲れてしまう。それは楽しくないんだ。 テスト前だから勉強していてもいいけれど、休み時間まで勉強しているとガリ勉におもわれる・・・なんてまた人の目ばかり気にしている。 自分への自信がこれっぽっちも無くなった証拠。 伏せた顔から見えないところで、親友の声がする。 誰かと、楽しげに笑ってる声・・・ この間まで、私に向けられていた声。
ほんの2年にも満たない前までは、こんな長い毎日が続いていたけれど、急にこんな生活になると・・・淋しいんだね。 学校に友達が居る生活を1年ちょっと続けただけで、私はその幸せとありがたみに慣れすぎてしまったんだ。 だから、今になってこんなにも破綻してしまった。 そうなるまで気づかなかったわけじゃないけど、無視していた。 馴れ合うのが楽だったから。 友情は人間関係、相手を思いやれなきゃ壊れて当然だよね。 壊したのは、私のせいだよね。
その日私から話しかけられたのは、2回だけ。 心臓が縮んで、胸が苦しく、肺は機能をなしていないんじゃないかと思う。 全校生徒の前で、生徒総会の開催を宣言する時は緊張しなかったのに、手に汗までかいていた、親友の前で。 緊張して、うまく言葉が出てこなくて、言いたいことの半分も言えなかった。 本当は言いたかった「ごめんなさい」。 口から出たのは「まだ怒ってるの?」。 それじゃ、怒らないわけないよね。それくらいで許すような甘い親友じゃない、あんたのそんな厳しいところが好きで、尊敬してたんだから。 そんなこと、1度も言ったこと無いけれど。 1度も言えなかったよ、そんなあんたが羨ましくて。
その日、彼女が授業中に送ってきたメールを読んで、授業中に泣いていた。 失ったものの存在が、大きすぎて。 ちっぽけな自分じゃもう二度と、埋められない気がした。 『お酒も飲まない、タバコも吸わない、学校にちゃんとくる、家には遅くても9時までに帰る、それが守れるって約束できる?』 『私は不真面目な人って大嫌いだよ。』 大嫌い。 でもお酒も、煙草も、辞められない。 何かに依存しないと生きていけない、駄目な自分。 仕方ないじゃないか。 今までの17年間が、私と彼女じゃ違いすぎる・・・。 同じようにはできないよ、もう、彼女のようにまっすぐに生きていけない。あんな風に綺麗には生きられないよ・・・。
その日が終わるまで、教室で彼女の声がする度に、酷く反応してしまう自分が居た。 彼女が誰かに呼びかける度、私の名前じゃないかと期待していた。 でも、全部違った・・・。 もう、私の名前読んでくれないのかと思ってまた泣きそうだった。 一緒に先生にわからない問題聞きに行こう、一緒に帰ろう、・・・全部私じゃない人へ発信され、私じゃない人が受信して。 彼女が帰ってしまった後も、私は教室に取り残されいた。 そしたら雨が降ってきて、私は、雨がやむまで学校に取り残された。 放課後の構内には、女の子たちの明るい笑い声が。階段を、廊下を、反響して響いてくる、私のトコロまできて、グサリと刺さる。
人はずっと思春期のテーマを繰り返すというなら、私はずっと「誰も信じない。人間は裏切る。」と思って生きていくのかな。 未だに「愛してる」と言えない。 そんな軽薄な言葉が吐けない。 愛して裏切られるなんて嫌だよ。 だけど今は、私が彼女を裏切ってしまったのかな。それで、私はこんなにも泣き虫になってる。1週間前までは珍しく泣くこともなかったのに、今は、毎日泣いて泣いて疲れて寝てる。 自分が悪いと知っているから、誰のせいにもできない。
明日からまた、学校は1人だろうか。 中学校に逆戻り。また、朝起きる度に気持ち悪くなるのかな。体と心はつながっている。 新しく友だちをつくろうにも、すでにクラス内はグループに別れている。私の入る隙間のあるグループは、無い。少なくとも私にはそう見えんだ。
彼女はどうしたら許してくれるだろうか。 彼女の言うように煙草も酒もやめなきゃ駄目なのか? でも、それはもうできないと思うよ。 学校にはしっかり通おうと思う、それは守れる気がするよ。 そんな私じゃ駄目なのかな。
「大嫌い」って言葉が鉛へ。 私はそれが重くて、彼女の顔を見上げることもできない。
修学旅行、糸数壕のなかで繋いだ手を、愛しいと思った。 バスの中で膝枕をねだられて、膝を貸した。重みが、愛しかった。 一緒に入った布団、一緒に食べたご飯、一緒に買ったおみやげ。 あの4日間が還ってきてくれればいいのに。 もう、戻れない明日になる前に、私は何をすればいいのか。 私はそれがわからなくて、泣くことしかできない。
love/end
小説じゃないような・・・ 今の現状ね。 もう勉強する気が起きない。 今、誰かに「ここにいてもいい」って抱きしめて欲しい。 自分が、要らない人間のような気がして、怖いよ。 |