大 将 日 記
DiaryINDEXpastwill


2005年02月01日(火) 新しい友達

今日から2月。私は今月から4月までの3ヶ月間、最近はすっかりテレビでその顔
が売れてしまった細木数子の六星占術で言う所の【大殺界】に突入した。季節と共
に正に冬の時代の到来である。

しかし、こんな私にも最近新しい友達が出来た。名前も知らないし話しをした事も
無い。だが確実に二人は知り合いで、お互いに存在を意識している。


毎朝私は東武野田線を利用して船橋まで出ているのだが、ラッシュ時は10分間隔
で電車が来るものの、船橋駅に近付くにつれ身動きも取れない、正に立錐の余地も
無い状態になって来る。特に馬込沢・塚田と言う住宅街の駅では、駅員さんが乗客
を押し込むと言う状態になる。私は変に少しの余裕があるよりは、この方が乗り心
地が良い。更に言わせて貰うと、私は船橋駅に付くと少し急がないと西船橋駅で武
蔵野線との乗換えが出来ない状態になるので、塚田駅ではいつも一度降りて駅員に
押し込まれながら入りなおすのだが、最近は慣れて来たもので自分が背中で他の乗
客を押し込んで乗り込めるようになった。私に押し込まれたら、大抵のラッシュ乗
車でも余裕が出来ると言うものだ。

そんなある日、その子は私の前に現れた。

いつも同じ電車に乗っていたのだろうか? はあはあと息を切らせて階段を駆け下
りて来て、階段から一番近い扉に飛び乗った。正に掛け込み乗車と言うやつだ。
どこかの私立小学校の3年生くらいだろうか? いつもはもっとすいてる車両に乗
っていたのだろうが、その日は寝坊でもしてギリギリに駅に到着したと考えられる。
制服姿にランドセル。私が無理やり入ったその扉に彼女は躊躇せず飛び込んで来た。
しかし、子供の力では大人を押し込む事が出来ず、持っていたカバンが扉に挟まれ
てしまい電車の扉が閉まらなくなった。慌てた彼女は一生懸命にカバンを引っ張る
が、なかなか取れない。そこで私が扉をこじ開けて、更に背中で乗客を奥へ押し込
めてなんとか彼女は電車に乗れたのだ。

「ふぅ」

と溜息をついた後、私の大きな顔を見上げ、発車する電車の音にかき消されるよう
な小さな声で

「ありがとうございます」

とお礼を言って来た。
私は微笑みでそれに応えるしか無かった。

船橋駅に着くと彼女はJRのホームにまっしぐらに走って行った。そして私の乗る
一本前の上り電車に乗り込んで走り去って行ったのだが、窓越しに私を見付けもう
一度小さく頭を下げていたのだ。なんともいじらしい女の子だった。

翌日、いつも通りに塚田駅は人が溢れていた。一度降りて最後に背中から乗り込も
うとすると、彼女が私の前に居た。これではこの子を押し潰して入らなくてはなら
ないと、とっさの判断で彼女より先に乗り込んでスペースを作ってあげた。すると
彼女もそれに気が付いたのか、少しだけニコっとして私の前に来た。

正直言ってある意味迷惑だった。

扉の所にそんな子供に居られては、電車の発着やカーブの時に自然に身体が傾くの
に、彼女の方には絶対に寄り掛かれなくなってしまったからだ。むしろ他の大人が
傾いて来るのをこっちが支えてあげなければならなくなったのだ。

そんな日が1月の新学期からずっと続いていたのだが、今では言葉は交わす事は無
いが、毎日目だけで「おはよう」の挨拶をしている仲になった。
彼女が乗って来ない日が2日位あったのだが、その時は特に意識はしていないのに、
翌日マスクをして電車に乗って来ると

「ああ、風邪で休んでいたんだなぁ」

と思い、それからは乗って来ないと逆に心配になる。
私は平日の休みが多いから、私が電車に乗って来ないと彼女も同じように思ってい
るに違いない。


たった2駅の区間だけの付き合いだが、新しい友達が出来たのが少し嬉しいです。


南 風 |MAILHomePage

My追加