死神の微笑み <20> - 2003年03月25日(火) 今日の空は昨日と違って、雲ひとつない快晴だった。 僕は昨日座ったところと同じところに座って、あたりを見回した。 浜辺には犬の散歩をしている人や、スケッチをしている人がいたし、海の遠くの方に何隻もの船が浮かんでいて、ゆっくりとした速度で海の上を滑っていた。 そのさらに向こうには、海と空を仕切る海平線がはっきりと見えた。 快晴でも、冷たくて強い海風は相変わらずだった。 湿気を含んだ海風。 時間がゆっくりと流れる空間。 次第に本当に時間が流れなくなってきた。 自分の一秒と僕以外の空間の一秒がずれてきている。 僕が10秒くらいかなぁと思うときに、僕以外の空間はやっと一秒になったところのように思えた。 さらにゆっくりと進むようになっていく。 その差は歴然としていた。 もうその速度の収縮が止まることができなくなっていた。 時間が進んでいるのかどうかわからないところまでやってきてしまった。 船は海上で停止していたし、人々は突っ立っていたし、鳥はまるで絵画のように躍動感を持ったまま空中で静止していた。 今の僕の目はまるで有名な絵画を見ているようだった。 でも、絵画よりも圧倒的にすばらしいと思った。 なぜなら、リアリティがまったく違う。 視覚的に感じるリアリティではなく、僕は肌でリアリティを感じていた。 ただ、今朝見た景色には負けると思った。 勝てるわけがないと思った。 あの時は刻一刻と景色が変わっていった。 空の色や街の影の長さや海の波の数が少しづつ、でも確実に変わっていっていた。 その一瞬一瞬が、すばらしかった。 むしろその移り変わりこそがすばらしかった。 次の瞬間にはもう見ることの出来ないその一瞬の輝きがすばらしいんだと思った。 すると、僕の中の「違和感」が激しくうずきだし、僕の体の隅々まで這い回った。 気分が悪くなった。 頭が痛くなって、吐き気がでてきた。 僕にはおかまいなしに、時間はもう停止しようとしていた。 時の爆発的膨張。 そしてついに、時間が止まってしまった。 この世界で時間軸をもっているのは僕だけだった。 −僕自身が世界の中心− 「なんだこれは。どうなったんだ。」と思った次の瞬間、時間ずれは見事に修復されていた。 僕の一秒が、僕以外の空間の1秒だった。 不安も絶望も何も感じなかった。 安息も希望もそこにはなかった。 ただ、自分の周りで起こっている現象に戸惑っているばかりだった。 芥川賞を受賞した作家さんは、福岡出身らしい。 関係はまったくないけど、なぜか嬉しい(笑) ...
|
|