風の行方...深真珠

 

 

死神の微笑み <47> - 2003年04月21日(月)

僕たちは近くのファーストフード店に入った。
僕は恐る恐る質問してみた。
「君は楽しいとか、悲しいとかって思うことあるの?」
「ゲーセン楽しかったよ。」
「そか。でも、気持ちをあんまり表情に出さないでしょ?」
と言いながら、さっき撮ったプリクラを見せた。
にこっと笑っている僕の隣でカメラをじっと見ている少女がいた。
「ちょっとは笑ってくれてもよかったんじゃない?」
少女は少しプリクラをみたあと、全部自分の黒いカバンに入れた。
「口を横に広げて、頬を上にあげれば楽しんでいるように見える?
 本当は泣いているかもしれないのよ。」
「そうかもしれないけどさ。」
「きらりと光る白い歯を少し見せたら、最高に楽しんでるんだと思ってもらえる?」
「なんでそんなつっかかることばかり言うのかな。」
「あなたが馬鹿馬鹿しい質問するからよ。」
僕は何も言い返せなかった。
「あなたはもっと自分と対話することが必要よ。」
少女はまたオレンジジュースを飲んでいる。
「もう必要なものはほとんどそろっているはずだから、ここからはあなたとあなた自身の戦いが始まる。」
「言っていることがよくわからない。」
「嵐の前の静けさ。」
そう少女が言って、僕は初めて気づいた。
喫茶店で何もかも話をしてから、僕はずいぶん調子がいい。
「違和感」が体中を這い回ることがない。
意識すれば、ずっと遠くに「違和感」を感じることができたが、今までに比べたらかなり楽になっていた。
少女はオレンジジュースを一気に飲み干すと、「帰る。」とだけ言ってさっさと外へでてしまった。
僕は急いで後を追い、外へ出た。
辺りを見回すと、まだ少女はそんなに遠くへは行ってなかった。
僕は走って少女を追いかけた。
今、少女と離れるわけにはいかなかった。
僕にとって少女は唯一のヒントだったし、唯一本当の話ができる人だった。
僕はなんとか少女の前に回りこむことができた。
「ちょっと待って。まだ話が終ってない。」
「もう話すことはないわ。」
「そっちになくてもこっちにはあるんだ。」
「さっき言ったでしょ。ここからはあなた自身で解決すべきなの。」
「そんなことできないってば。僕にはまだわからないことだらけなんだ。
 君の力が必要なんだよ。力を貸して欲しい。」
「それはできない。」
「なんで?」
「あなた自身の物語だから。」



「私は何をがんばった?」と親が問う。
看護士が「○○(苗字)さん、がんばったやんね。」と親に言う。
おばあちゃんが「○○(親の名前)、がんばったやんか。」と親に言う。
僕が「がんばったやん。」と親の手を握る。

親はそれでも問う。

「私は何をがんばった?」


...




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