★ スローカーブを、もう一球 - 2004年01月30日(金) こんなに家にひきこもる休暇もめずらしい。ポカポカ少し暖かくなると天気予報は言っていたけれど、朝からこたつで本を読む。昨日の続きの新潮文庫「その時殺しの手が動く」新潮45編集部編 だ。 うー暗くて重いなぁ。この本が重いのは、ある意味自分の中にも殺人者を理解できる部分があるからなんだ。まったく理解できない存在であれば、他人事ですむ。凶悪な殺人事件の背景を読んでいて他人ごととして済まされないところに不安が蘇るのだ。 紙一重の匙加減で人は殺人者にも被害者にもなってしまうという恐怖がこの本にはある。 午後になって万豚記という中華料理店で昼ご飯を郁さんと食べて、あきるのの東急へ買い物など行った。近くのリカーショップで、ジンとウォッカ、クラブソーダとワインなどを買った。たまにはカクテルでも作ろうかと思って。 買い物から帰ると再びこたつで本を読む。次は山際淳司の「スローカーブを、もう一球」だ。こちらはスポーツ選手のドキュメント。作者は数年前若くして亡くなってしまった。NHKのスポーツ解説を休業しているんだと思っていたら、しばらくして訃報がその番組から伝えられた。 「江夏の21球」などは有名。でも表舞台に立つことのできなかったバッティングピッチャーの物語など、必ずしも成功したヒーローの物語ばかりではないところが彼らしい。成功者がいれば、落ちこぼれてゆく人もいる。人間らしい表現と綿密に行われただろう取材に彼の才能を感じる。輝くサクセスストーリーよりもどこか影のある選手の心象風景をリアルに表現する彼の文章に好感をもちつつ読んだ。 自分を表現することのない、スポーツ選手の人生が彼のペンによって蘇り、読者に感動を与える。普段知ることのないスポーツ選手の心の渕を表現する貴重な作家だったのだなぁ、と思いあらためて作者の急逝を悼む。 -
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