カウントシープ
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2005年01月18日(火) 増殖する悪意

『増殖する悪意』という言葉を、[多重人格探偵サイコ]の帯で見た。

多くの人間には、共感するという能力がある。(多くの、と限定するのは、先天的に共感する力に欠けていたり不足している人達も存在しているから)楽しいことや悲しいこと、わくわくすることや不安に思うこと、幾つもの感情が、言葉やジェスチャーというコミュニケーションを介して伝わり共有されていく。

映画のように人間が創り出したものには、ある程度共感に偏りがあるだろうが、一定の感情的高まりを提供するだろう。
コンサート会場に集まったファン達の胸にこみ上げる高揚感は、会場全体に地響きを起こすほどだ。

津波や地震で何もかも崩れ去った光景は、より普遍的な恐怖や悲しみを胸に呼んでくるし、生まれたての赤ん坊(それは人間に限らない)に対する保護欲なども、生き物の心に備わっている普遍的無意識的な感情だろう。

怒りもまた、共感され伝わっていくことがある。凄惨な事件を前に、不誠実な発言を前に。目の前の、あるいは目の前にいない存在に対して怒りを抱くことがある。

悪意はどうだろうか?悪意に近い感情が胸の奥に湧き出てきたとしても、それはおいそれと晒されていようなものではなく、己の中心にすえておくには少し耐え難い、保ち続けるには苦しい感情に思う。

胸の奥に秘められた悪意は底辺で漂い、意識下に潜んでいる。それが、あるきっかけによって複数から浮上してくるとしたら?何が先導するのかはちょっと今想像つかないけれど、対象を見失った悪意が周囲と共有されることがあったとしたら。対象なき悪意の集団が、互いにそれを向け合い傷つけあうような光景が起こるのだろうか。
それを止めるものが存在しないくらい、集団を先導する悪意なるものが存在するとしたら、それは個々の中に内包されていたものに他ならず、それはすでにボク等の意識下に潜んでいるのだ。


ロビン