カウントシープ
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術後1日の朝、顔を出したら、相方はもう結構元気な顔をしていた。もうすっかり麻酔からも覚め意識もはっきりしていて、見ているこっちもずっと安心した。 今回は内臓ではなかったので回復も早いのだ。その分術後に外見が多少変わってしまうのだが、それでも生きていてくれるならボクは全然構わない。相方がその変形をどう思うのか解らないが、この病気も傷も含めて相方の一部で人生なのだから、ボクもまた一緒にこの傷もなぞっていこうと思う。
ずっと昔、異性の人と付き合っていた。ボクはまだ10代で相手も2、3上で。よく一緒に本を読んだが、その中の一冊のエピソード。『ある好青年が魅力的な女性と知り合い恋仲になる。それまで軽かった男は、彼女に夢中になり結婚を決意するが、その彼女が膝に骨肉種を患い足を切断することになる。彼女が男に、片足のない私でも愛してくれる?と聞くと、男は当たり前さ、と答える。だが彼女はしばらく会わないでおこうと提案し、男はそんなことで自分は愛さなくならないと自問自答するのだが、時間が経つうちに気持ちは変化していき、彼女に別れを告げる・・・』
このエピソードについて話し合った時、ボクはまだ幼かったけれど、たとえ片足がなくなっても愛は続くと思った。相手はこのエピソードに肯定か否定かの答えを出せなかった。ボクは自分が偽善者っぽくて嫌だなぁと思いながら、別れないと思うと答えた。
今は解る。今までに相手と共に過ごした月日が、思い出が1日1日積もっていき、次第に大切になってボクを構成していき、今では相方はもうボクの一部になっているのだから、相方の片足はボクの片足でもあるのだ。ボクはボクの片足がなくなっても当たり前に生きていくだけだ。
ロビン
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