カウントシープ
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ドヴォルザークの『新世界より』という交響曲がある。有名なフレーズが沢山あるので、知らず知らずのうちに皆聞いているクラシックの代表作だが、ボクはずっとこの新世界とはどこだろう?と考えていた。
調べてみると、ドヴォルザークはチェコ人、アメリカに招かれて51歳から54歳まで移住している。1892年、彼にとっての新世界とはアメリカだったのだ。(思い出してみれば、彼は『新世界より』のほかに『アメリカ』という作品も残していた)
故郷に寄せられた思いが、この交響曲の魅力なのだろうか。クラシックは適当に聞いているだけのボクだけれど、この曲はすごくドラマティックに感じる。話は連想して、萩尾望都氏の作品のひとつ『銀の三角』は、数ある彼女の名作の中でもボクにとって一番感銘を受けたものなのだが、この話の中に出てくる物語の鍵となる人物は、自分の故郷から遠く時空と空間を引き離されてしまう。彼女は、その思いを胸にリュートを片手に歌を歌うのだが、その歌は人々を煽動するほどの力となっていくのだ。
故郷的なものに対する思いがそれほど力を持つことなど、若者には思いもよらない。若者は、外へ外へ、もっと広い世界を見たくてうずうずしているから、背後に残してきた故郷のことなど省みない。
50を過ぎたドヴォルザークがアメリカに渡って一番最初に書き上げた『新世界より』は、『新世界』ではなく『新世界より』なのであり、何処か別の場所からこちらに遣された思いなのだ。
ロビン
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