カウントシープ
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2005年05月02日(月) think of me

オペラ座の怪人のナンバーのヒトツ "think of me"

第一フレーズ/劇団四季のVer.
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どうぞ思い出をその胸に
2人は別れを告げるけれど
忘れないでいてね過ぎし日の愛を
いつか貴方の胸に蘇る
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この曲は、バックダンサーの1人だったクリスティーヌが主役に抜擢されて歌うオペラ“ハンニバル”の中の1曲、という設定で歌われるのだが、同時にクリスティーヌとラウルの再開を示唆している場面でもある。

クリスティーヌは母親を早くに亡くし、ヴァイオリニストだった父親ダーエとともに各地を演奏しながら転々と旅をして少女時代をすごす。土地や人間などへのしがらみがない生活を父親と2人きりで送っていたところで父親が死亡、18の頃にパリに流れ着いてオペラ座に入るが、心は今でも父親の死を受け入れられない、どこか夢見がちな少女としてファントムの前に現れるのだ。
ファントムが父親のフリをしてクリスティーヌの前に現れた時、クリスティーヌはいとも簡単にそれを父親=音楽の天使だと思い込む。それは彼女が特別夢見がちでロマンチストだったわけではなく、父親の死を通過する喪の仕事(モーニング)を回避するのにこの上ない適合者が現れたために、すり替えがクリスティーヌの側に起こったのだ。

ファントムは声だけで、けしてクリスティーヌの前に姿を見せない。それは彼が醜さを露呈することを恐れたからだが、これが更にクリスティーヌを拘束することになる。もし、早くから姿を見せていたならば、クリスティーヌは時間とともにそれが父親とは違う人格であると(姿はこの際あまり関係がない)認識せざるを得なかっただろうし、ファントムも父親の役割を演じ続けることなく、1人の人間としてクリスティーヌと関わることが可能であったかもしれない。
ファントムはまさしく父親の亡霊の役割を演じ、2人の世界は保たれていたが、ラウルという人間の登場によって、ファントムは亡霊ではいられなくなってしまう。クリスティーヌはラウルによって現実に引き戻され、父親の亡霊に替わる相手を見つけようとしたそのときに、ファントムもまた亡霊の役割を脱ぎ捨てて1人の男として舞台に登場するのだ。


話は脱線したが、冒頭の歌のフレーズがボクはとても好きで、いつも口ずさむ曲の1つだけれど、思い出を胸に生きていくことに多少のシンパシィを感じているからだろうか。
エヴァの中でシンジが『思い出を大切にして生きていって何が悪いんだよ!父さんの言葉さえあればこれからだって生きていけるんだ』とか自問自答するシーンがあるけれど、ボクはすごく心引っ張られるシーンだった。
シンジは独りの殻から出てこれないけれど、思いではできれば自分だけじゃなくて、相手と共有できたらもっといいことのように思う。ボクにとって大切な思い出が、ボクの愛の対象にとっても大切なことであるならば、それはとても嬉しいことだと思うのだ。


ロビン