カウントシープ
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妹の産んだ赤ちゃんはすくすくと大きくなっている。妹はボク達の母親にたいしては複雑な気持ちがあるから、実家ではお産をしなくて、旦那さんの実家でお産をして、子育てしているのだ。これを話すとみんなええって驚くけれど、義理のお母さんのほうがボク達の母親よりもよっぽど母親としての要素を沢山持っているので、妹の気持ちもボクには解った。
赤ちゃんを見に旦那さんの実家に遊びにいったら、五月人形が2つ並んでいた。1つは旦那さんのもの、もう1つは赤ちゃんのためにボクの両親が贈った物だ(ボクの両親だって何もしてくれないわけじゃない、言葉が足りないだけだ)妹は両親から五月人形が届いたことがとても嬉しかったみたいで、いつもよりもはしゃいでいた。
旦那さんの五月人形の前には、20個くらいのボロのヌイグルミが一緒に並べで飾ってあった。みんな、旦那さんの子供の頃の大切な友達らしく、薄汚れていたけれど、とても大切に並べてあって、旦那さんが愛されていることが直接的に伝わってきた。ヌイグルミのうち幾つかはスヌーピーだったけれど、ボクはスヌーピーがこんなに優しい顔をしていることを初めて知って、見ているうちに涙が少しだけ浮かんできた。
ボク達の母親だって、ヌイグルミをちゃんとひとつふたつは与えてくれた。でも、ボク達はあまりヌイグルミが好きじゃなかった。触られるのが嫌いな母親は子供を抱っこしてくれなかったから、ボク達だって何かを抱っこすることは思いつかなかった。ボロになったら「捨てていい?」って聞かれたから捨てた。
本当は、ボロになって子供が要らないっていっても、特にお気に入りのものはとっておくほうがよかったのだとボロのスヌーピーを見て知った。妹は、旦那さんのボロのヌイグルミをみたから、きっとボロのヌイグルミを捨てたりしないだろうと思うと、いい母親のモデルがいることは大切だと思った。
相方には年が離れた弟がいるが、この子はとても大人しくて、人形遊びやヌイグルミが好きな子だった。母親は男の子なのにと心配して、ある日、弟が大切にしていた人形を勝手に捨ててしまった。この女の子の姿をした人形は弟がいつも一緒にいた大切な友達だったので、それが居なくなったとき、『何処に行ったの?』と探した。相方も一緒に探してあげたけれど、何処にも居なかったので、彼は泣いた。あんまり泣いたので、慌てて同じ人形を母親が買ってきたが、弟はそれには触らず、それまで好きだった人形遊びもヌイグルミを抱くことも全部やめてしまった。
ヌイグルミや人形のような、その人が大切にしているものというのは、その人の世界なのだ。そして、それを大切にするということは、相手の世界を大切にするということで、子供の世界は守られなければならないのだ。
ロビン
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