過日になりますが、落下する夕方という本を読みました。
八年同棲していた彼に別れを決断され(笑)、3日前にであったほかの人がすきになったからと言われる主人公の梨果。彼はあっさりでていきました。
この、ほかの人、にあたる女性華子の申し出で梨果は華子と一緒にすむことになります…華子にあいにくる元カレ(笑)と三人で、一緒に暮らした部屋でごはんを食べたりもします。
とても不思議なのは、華子の風貌や多面的な魅力についてはすべてが肯定的な表現がたくさんあるのに、 梨果がどんな風貌なのかほとんど手がかりがないんです。
梨果によって語られているからかもしれないけど。 梨果は自分の心や自分のだした声やことばについていつも客観的なんだけど、自分の容姿についてはノーコメント。 登場人物すべてが、ビジュアルの印象が想像できるのに主人公のビジュアルが特定されないようにしてある。
そのせいか、梨果が自分になったような気がしてきてしまう(わたしは華子ちゃんとは一緒にすみたくないが笑)。 トリックファンタジーの世界に巻き込まれたような気分でした。
魔性ビューティー、恋愛にはクールなフシギちゃんの華子にしばしばやきもきする主人公の梨果なんですが。 華子は、正直で変に素直(笑)で無防備なつかみどころのないキャラクターなのです。 私が華子をみたら、そのまっすぐさに苛立ちと疎ましさ&羨ましさを覚えてしまいには、嫌いになる(爆)んじゃないかとおもいますが…梨果は、華子を嫌いじゃないらしい。憎めないらしい。 感化されて私も華子がすきになりそうだよ。
これまでに何度も読み返してみると華子が一番信用していた人は梨果なんじゃないかと思いました。 基本的に、人に憎しみをもたない才能をもっている梨果こそが無防備で同時にけしてよごれることがなく。 華子が海よりも好きだとゆう、「空」のような人だったんじゃないかと。
自分の想いとはギャップ大の、ありのままの周囲を、受け入れても、 「怒りで固形化しない、憎しみに侵食されない」 ……主人公の梨果が、「ミステリアスはぐらかし奔放モテ子」役の華子よりも、よほどフシギだよ(笑)正直ゆうと、梨果が羨ましい私です。 梨果が、自分の耳に聞こえた自分の声から、自分の本心を見抜く場面がいくつかあったので…、とりあえずそこをまねしてみたい。
そんなわけで、毎回読後にこれといった結論がでない物語。 しかし江國香織独特の、繊細な清潔感あることばに魅力を感じます。 最近また増やしたハーブ(レモンバームとか)が育つころにでも、いつかまた読んでみようと思いました。
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