| 2001年10月12日(金) |
「橘花の仇」と「失われた手仕事の思想」をちょっと。 |
「橘花の仇」と「失われた手仕事の思想」を少しずつ。 佐伯泰英の鎌倉河岸捕物控「橘花の仇」(ハルキ文庫)の第二話「逢引き」を読んだ。強烈な個性をもつ侍が主人公の話とは違って人情味で読ませる。作者の器量の大きさが控えめに出ている。直心影流免許皆伝という同心寺坂毅一郎が抜群の腕前を示す場面は数行だが、光っている。 塩野米松「失われた手仕事の思想」(草思社)は最近評判の単行本。まえがきと最後の第4章「手の記憶」を先に読んだ。具体的な手仕事や職人を扱っている部分は避けたことになる。興味が今一つ湧かなかったせいである。平明かつ綿密な文章が描き出しているのは冷徹な現実だった。かつて川田順造が「サバンナの手帖」で語った、日本における手仕事の未来は「今」だったのだ。すべては題名が語っている。
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