読書日記

2002年03月16日(土) 丸谷才一「だらだら坂」(文藝春秋「日本の短篇 下」1989.3.25所収)を読む。

 丸谷才一「だらだら坂」(文藝春秋「日本の短篇 下」1989.3.25所収)を読む。
もともとは短編集「横しぐれ」中の一篇。酒の席で壮年の男性が若い同僚に向かって喧嘩の極意らしきものを口にした後、若き日の回想を一人語りを始めるのが冒頭である。
一年浪人して大学に入学できた若者が手頃な空き室を探しにだらだら坂を超えて周旋屋野前で部屋を物色しているといつのまにか二人の男に挟まれているのに気づく。
二人は金を巻き上げようとしているらしい。
隙を見て逃亡できた彼がだらだら坂を下って街中に戻ると彼のあせりや不安、恐怖が嘘のように見える光景があった。
気がつくと彼は新宿の遊廓を歩いていた。
思いがけない成り行きで真面目な道を踏み外した若者が主人公であるが、それにしても一人称の語りの調子が見事で、内容よりもこの語り、文章が主人公といえるのではないか。十五、六ページ程度の短さの中で戦後すぐ当たりの雰囲気をよく練り上げている。


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