旅をしていると温泉に泊まることが多い。温泉宿といっても一泊が2千円か3千円のいわば木賃宿の類。湯治客などが自炊をしながら長逗留するような宿だ。だから自炊客からおもいがけないご馳走にあずかりながら互いに身の上ばなしで夜が更けることもある。昨夜泊まったH荘は部屋を案内してくれた女中さん(女性従業員というべきか)が親切な上なかなかの美人で昔観た映画「若い人」の島崎雪子を思い出させた。奔放な江波恵子とは逆のイメージでこんな鄙びた温泉宿で働く彼女に何か悲しげなものを感じたが身の上を聞くことはしなかった。