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未来予報 あした、晴れればいい。/乙一
2001年08月30日(木)
もう夜遅かったので、読もうかどうしようか迷ったのだけど、誘惑に負けて読んでしまった。…やっぱり泣かされた。よかった。

小学生だった主人公と近所に住む女の子は、転校生と友達になる。その転校生は「未来予報」の力を持っていた。天気予報と同じく、絶対確実ではない「予報」。彼がある日言った、その「未来予報」のひとつが、話のキーになる。
時の流れを淡々と、追った話。雨や雹など、タイトルにひっかけて様々な天気を場面場面に絡めていて、それらのシーンがとても鮮やかで印象的。特に雹のシーン、会話は何もないのに、じーんとくる。

けれど、この話の冒頭に書かれているように、彼はその物語の中の十年間、「だらだらと何もない日々をすごしていただけ」。表面的な出来事としては。
淡々とした文章で、物語は進む。この作家は、決して文章が達者だとは言えない。なのに、「何もない日々」「無関係」を、こんな風に描けるなんて、すごいことだと思う。涙が出る。

目に見えるものだけがすべてじゃない。でも、目に見えないものだけが尊いわけでもない。それでも、目に見えない何かを信じようとして、みんな必死で生きている。
何もなかった。でも、そこには何かがあったんだ。
彼の書く話は、目に見えないものを、「あるよ」といとも簡単に言ってくれる。そして、たとえ今信じられなくても大丈夫だよ、と言ってくれる。
私は、いつもいつも、そんな言葉を欲しがってるんだ…。


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