気まぐれ日記
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2003年07月10日(木) 前言撤回

 地元でも売ってました、ハヤカワ文庫の日本人作家。やっぱり数は少ないかな。それでも続巻購入。前作のあの結末を15年も維持していたなんてすごすぎ。まさに空白の15年。草が読んだのは改訂版なんですけど、ほとんど直してないとか……。

 「セリナ……?」
 ふらりと夏目は玄関先に現れた。その表情は蒼白で肩で息をしている状態だった。
 「トーマ様。ごめんなさい、薬忘れちゃった……」
 「いいじゃないか、セリナらしくて」
 夏目はそう言った。
 セリナをセリナとして扱う言葉。「セリナらしい」といえるのは、セリナと暮らしてきた彼しか言えない言葉だった。
 「うう……」
 夏目が床に倒れこむ。
 「夏目君」
 森が体を支えて、ゆっくりと寝かせる。その間も彼は苦しそうなうめきをあげていた。
 「一体夏目さんはなんの病気なんだ!」
 見るに耐えなくなった井上が叫んだ。
 「彼は貴方になんと?」
 「性病だと言ってました」
 「性病ねえ、確かにいえるかもしれない」
 夏目の体がだんだん小さくなるように井上は見えた。見えたのではなく、本当にそうなっている。
 「発作が起きるとこうやって骨格すら変わっていく。遺伝子の異常だよ」
 「遺伝子?」
 「正確には病気じゃない。彼は子供のとき、大病を患って手術した。でもこのご時世ではとても払えるような金額じゃない。だから、彼の体を買ったんだ、病院が……私の父が」
 「夏目さんを何かの実験に使ったんですね。よく新聞とかで目にします。でも、これは……?」
 「体が変わるんだ。かなり激痛だよ。彼にしかわからないだろうけど」
 セリナがしゃがみこみ、夏目をさすっていた。それで井上から良く見えなかったが、発作がおさまったらしく彼のうめきはとまった。
 「彼を実験に使ったおかげで成功したんだ。でも、いまだ彼の体はそれを受け付けないでいる。だから病院で薬をだしているんだ」
 「発作止めを?」
 「そう。高い薬だからね、彼女に体を求めたこともある」
 「彼女?」


草うららか |MAIL

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