気まぐれ日記
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地元でも売ってました、ハヤカワ文庫の日本人作家。やっぱり数は少ないかな。それでも続巻購入。前作のあの結末を15年も維持していたなんてすごすぎ。まさに空白の15年。草が読んだのは改訂版なんですけど、ほとんど直してないとか……。
「セリナ……?」 ふらりと夏目は玄関先に現れた。その表情は蒼白で肩で息をしている状態だった。 「トーマ様。ごめんなさい、薬忘れちゃった……」 「いいじゃないか、セリナらしくて」 夏目はそう言った。 セリナをセリナとして扱う言葉。「セリナらしい」といえるのは、セリナと暮らしてきた彼しか言えない言葉だった。 「うう……」 夏目が床に倒れこむ。 「夏目君」 森が体を支えて、ゆっくりと寝かせる。その間も彼は苦しそうなうめきをあげていた。 「一体夏目さんはなんの病気なんだ!」 見るに耐えなくなった井上が叫んだ。 「彼は貴方になんと?」 「性病だと言ってました」 「性病ねえ、確かにいえるかもしれない」 夏目の体がだんだん小さくなるように井上は見えた。見えたのではなく、本当にそうなっている。 「発作が起きるとこうやって骨格すら変わっていく。遺伝子の異常だよ」 「遺伝子?」 「正確には病気じゃない。彼は子供のとき、大病を患って手術した。でもこのご時世ではとても払えるような金額じゃない。だから、彼の体を買ったんだ、病院が……私の父が」 「夏目さんを何かの実験に使ったんですね。よく新聞とかで目にします。でも、これは……?」 「体が変わるんだ。かなり激痛だよ。彼にしかわからないだろうけど」 セリナがしゃがみこみ、夏目をさすっていた。それで井上から良く見えなかったが、発作がおさまったらしく彼のうめきはとまった。 「彼を実験に使ったおかげで成功したんだ。でも、いまだ彼の体はそれを受け付けないでいる。だから病院で薬をだしているんだ」 「発作止めを?」 「そう。高い薬だからね、彼女に体を求めたこともある」 「彼女?」
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