気まぐれ日記
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2003年07月11日(金) |
本当に悪い奴はかけない |
森氏は本当に悪い奴でない、良い人ともいえないけれど。草はそんな奴でとどまってます。本当に悪人という奴は書けないです。未だに。でも、変態者は多いです。多分。
「彼女?」 井上が繰り返した。 「まさか……」 「そうだよ、そのまさか、さ」 夏目がゆっくりと立ち上がった。セリナに支えられている。井上には紀代と名乗った女がそこにいた。 「紀代さん……」 「ごめんなさい。だましたくはなかったけど……」 夏目が目をそらして言う。 「遺伝子を組み替えて、性転換する。それが、病院で行われた手術だった。人体実験は成功したが彼女は、彼女でいたくない。それから元に戻す手術を行おうとしたが、もう一度やるには危険な手術だから薬で戻そうとした」 森の話の続きは夏目が続けた。 「薬が開発された。けれど薬が切れるとまたこの体になる。その繰り返し。女になるのも男に戻るにも激痛が走る」 「それでも、夏目君は元の姿に戻りたいそうだ」 「あたりまえだろ、それが俺なんだから。でも、男でも女でも、俺は不自然だ」 セリナが心配そうに夏目を見つめる。 「セリナ、もういいよ。いつものように俺と接してくれ」 「トーマ様、体の方は?」 「心配ないよ。それに何かあってもここは先生の家だから」 「夏目君、コーヒー温めなおそうか?」 「うん」 「貴方も、一杯どうですか?」 「そうですね、まだ聞きたいことはある」 怒っているのかないのかわからない表情で井上は上がった。それで居間には奇妙な男女が四人になった。 「紀代というのは?」 「俺のお袋の名前だよ。昔の名前みたいだって嫌がっていた」 「夏目さんのご両親は?」 「もう、いないよ」 「そうですか」 夏目の歳で親がいないのは少し珍しい。せいぜい井上の歳で両親がいないのが普通だった。 「はい、夏目君」 森がコーヒーを渡した。温めなおし、さらに濃い目になったと思われる。 「ありがと」 「あと、これは貴方が下さったチョコレート」 「うん」 井上は、黙ってみていた。夏目にはない何かが今の夏目にある。そう、言葉遣いは夏目でも紀代だった。 「夏目さん、お菓子類はあまり食べないんじゃ……」 「……なんでだろう?」 「夏目君は、女性になると少し変わる。性格、考え方や好みも微妙にね。当の本人も気づいているけど、どうにもならないらしい」 森が解説する。 「貴方もどうぞ」 コーヒーを井上に渡すと、自分はワインを持ってくる。 「夏目君もどうだい?」 「はい、いただきます」 「彼は飲まないけれど、彼女は飲むんだ。どういうわけか」 森が楽しそうに言った。
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