気まぐれ日記
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2003年07月31日(木) 疲れる……

 なんてこった。一週間のうちに三回早番。人がいないとはいえ酷い。疲れた。というか、疲れる。それでも明日には新しい人が入る。もってくれればいいんですが……。

 「やあ、部下が失礼しました。多少の無礼はお許しください」
 社長を名乗る男は立ち上がって、夏目を招きいれた。
 「僕は尾崎。夏目君の話は聞いているよ。あの小さな会社で作っているドールがこれだね」
 セリナが夏目の後ろに隠れる。夏目もセリナをかばうようにした。
 「そのドールを少し貸してくれないかな」
 「いやだといっても……」
 「力づくで、ね。嫌な世の中になったね。権利もプライバシーもない。昔騒いでいたなんてうそのようだ」
 「セリナをセリナのままで返してくれるんだよな」
 「もちろん、それは約束する」
 夏目が少し黙った。
 「セリナ、起動停止」
 「え、トーマ様。それは……」
 「そうだ、それでは意味が……」
 「いいから、セリナ、起動停止」
 セリナが目を閉じて、ばったりと倒れた。マスターの声のみでドールはすべての行動を停止させることができる。平たく言うと電源をオフにした状態である。
 「これで、セリナは大丈夫だな」
 「君は、大丈夫じゃないよ」
 尾崎が静かに言った。
 「これが、君の答えだね」
 「ああ、そうさ。セリナをいじられるくらいなら、ね」
 後は井上のプロテクトを信じて、勝手にプログラムを変えられないようにすればいい。
 「わかったよ。ならこちらは少々手荒なことさせてもらうよ」
 夏目が身構える前に、尾崎が腕を振り上げた。拳が頬に入る。夏目がよろめいてしりもちをつく。
 「女の顔を殴れるなんて、久しぶりだね」
 「あんた、本当の女も殴るのか?」
 夏目は立ち上がった。たいした痛くはないが、腫れるだろう。
 「そうだねえ、僕にはどっちも同じだから。さ、痛い目会いたくなかったらセリナを再起動させるんだ」
 「やだ。あんたの思い通りになるのも面白くない」
 「ふーん、じゃあ、痛い目を見るかい?」
 「痛い目ね。俺はたいがいの痛いのには慣れているから……」
 その言葉に尾崎が笑った。いじめがいがあると言って、夏目に向かった。


草うららか |MAIL

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