気まぐれ日記
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2003年09月01日(月) 九月ですね。

 フェアリードール再開です。これで終わってくれるといいんですが……。

 樋口は、自分用のソファーに腰掛けて、夏目らを客用のソファーに座らせた。メイド(自社のドールだった)にお茶を持ってくるようにいい、
 「さて、何から話そうか?」
とパイプをくわえた。
 「まず、俺をここに連れた理由を教えてください」
 夏目が言った。
 「うん、夏目さんというより、セリナに会いたかったというべきだね。でも、井上君のレポートを読んで君にも会いたくなった。要請の女王とは恐れ入ったわ」
 「でも、俺、いまだ女王を感じたことはない。あれから特に体の変調はないし」
 「だって、女王は眠っていますから。そうそう起きる方ではないのですよ、トーマ様」
 と、セリナ。
 「女王についての質問は、私が答えます」
 「そうかい? では何故、女王は地に埋まっていた?」
 「女王は、もともとは地の妖精です。女王になった時点でもほとんどを地の中ですごしていました。人間が私たちを忘れてからというもの、女王はどんどん深く沈んでしまいましたが、あの会社を建設中に偶然見つけ出されてしまったようです。あの会社がどうやって女王のエネルギーを変換させてドールのエネルギーに変えているのかわかりませんが、あのままだったら女王は消えてしまうと思います」
 「ふーん。では、君はどこから出てきたのかな?」
 「私は……植物の妖精です。何十年に一回くらいの割合で花の開花のときに生まれます……いえ、この世に出てこれるというのでしょうか? 私たちは気まぐれですぐ消えたり、とどまったりできます」
 「他にも、セリナと同じ妖精はいるの?」
 「ええ、女王がトーマ様の中にいるということで、各地で目覚め始めています」
 「その妖精たちが目覚めると、どうなるのかな?」
 「時間が逆行します」
 セリナははっきりと言った。
 「私たちがすごしていた時間まで、さかのぼります」
 「なんだって?」
 「やはりな。妖精たちは自分の生きた時間に帰りたいのだよ、夏目さん。君も、知っているだろう。妖精に限らず、すべての生き物は人間によって狂わされた……民俗学者の一派が言っているのをな」
 樋口は、パイプから口を離した。


草うららか |MAIL

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