気まぐれ日記
DiaryINDEX|past|will
妹が借りてきたDVD。マネキン一家が笑わせてくれます。つーかパパもママも笑ってばっかりです。 あと、最近、黒猫に頭のっとられてます。実在する猫ではありませんが……。
次の日、夏目は戻ってなかった。ほっとしてベッドから降りる。 (なんで、ほっとするんだ?) 「おはようございます、トーマ様」 「おはよ」 いつもの朝だった。セリナがコーヒーを入れる。 昨日、樋口と井上と別れて帰宅した後、何度も自分の中にいるという女王に話しかけた。セリナが無駄と言ったがとめなかった。 ベッドに入ってからもずっと語りかけていたが、眠さに勝てず寝てしまった。 「元気ありませんね……やっぱり、気になりますよね、昨日の話」 「うん、第一時間が戻るなんて突拍子もない、誰も、信じることができないよ」 「そうですね、だからうまくいかないかもしれないのです」 「うまくいかない?」 「はい。妖精たちが目覚めるといっても、この今の世界では不完全ですべての力が発揮されないでしょう」 「そんな、いい加減な」 「トーマ様、それでも私たちは、真剣なのですよ。さ、今日は森先生の診察ですよ。病院混まないうちに行ってらっしゃい」 人間たちの心配をよそに、セリナは他人事のように明るく振舞う。夏目は、もしかしたらあくせくしているのは人間だけなのかもしれないと思った。もしかして、セリナに試されているかもしれない、とも。 森に会うと、まずため息をつかれた。 「一体何がどうなっているのかね」 もちろん、体のことである。 「俺にも、やっぱりわかりません」 「すまない、そうだね。そして、最近の貴方はどちらも夏目君なのだよ」 「?」 「自分でも気づいていないだろうけど、男であろうと女であろうと、貴方は夏目君なのだよ」 「ますますわからない」 「うーん、なんと説明したらよいかな? 以前の貴方は女であることに戸惑ったりしていたけれど、今はそれがない」 「うん、女のときは女を満喫するね。不便な点もあるけど」 「その辺かな。慣れた、ということじゃないんだろうけどね」 薬は、もういいね、と森は言った。 「ただね、何があるかわからないからね。いつでも来なさい。その点は病院が処理しなければならないからね。別に、遊びに来てもいい。世間話なんかしたければ……」 「先生、それなんだけど……」 夏目は、セリナの言った妖精たちの計画を森に話した。森は困惑した顔をしたが、信じたようだった。 「何しろね、あれを見たからには信じないわけがない。ただ、人間が滅びるというのは杞憂かもしれないね」 「なんで?」 「そう、簡単に滅びてしまったら歴史が泣くよ。いや、今の人間たちなら滅びてしまうかもしれないね。でもね、時間を戻そうが進めようが生物は生きることには貪欲なのだよ、なんとかして生きるよ」 医者としてはあまりいい言葉ではないね、といい森は笑った。 「どうしたんだね、ぽかんとして」 「いや、久しぶりにいいことを言うなあと思って」 「普段、言ってないような口ぶりだね。確かにないことだけど。はい、診察終わり。次は何かあったときでいいから。さっきも言ったけど遊びに来てもいいよ」 「はい」 病院から出る。こんな気分で病院を出るのは初めてだった。と、いうか今日ここにきたおかげで、それまでの不安はなくなった。 「森先生、もしかしてカウンセリングとかやったほうがいいんじゃないか?」 夏目は、そんな独り言をいい家に向かった。帰宅途中、街路に植えてあるひまわりを見た。大輪の中に、15センチほどの虫がいた。 「!」 「あれ、お姉ちゃん。見えるの?」 それは、しゃべった。虫ではなく、ヨーロッパなどの絵本で見られるような形の妖精だった。 「たまにいるんだよねー。ラッキーだねー」 「妖精……今、目覚めたの?」 「そうだよ、僕らもたまには起きないとね」 妖精は飛び上がって空に向かった。 「じゃあね」 小さいためにすぐ見えなくなる。夏目は、見えなくなってもしばらく空を見ていた。
|