気まぐれ日記
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2003年09月05日(金) 明日で終わりたいなあ

 フェアリードール。終わらせたいです。

 その日は、何事もなく朝を迎えた。夏目はいつものようにセリナが入れたコーヒーを飲んでいる。
 昨日、美幸がきた。
 「夏目さん、久しぶりですう」
 「ああ、天藤さん。こんにちは」
 「今日は、紀代さん、いないんですね」
 「え、ああ」
 夏目はセリナを見た。にこりとしている。自分が、男に戻ったのを気づかないでいた。
 「とっくに気づいていらっしゃるかと思って……」
 あとでセリナに聞いたらそう返ってきた。
 「ああ、もう俺、どっちでもいいや」
 男でも女でもやることは同じだった。
 もしかしたら最後かもしれない夜を、彼はいつものように過ごした。違っていたのは、セリナが安ワインを差し出したことだった。
 「ああ、それ、もらいものの……」
 「はい、冷やして飲むと飲みやすいって」
 「せっかくだから、一杯だけもらうよ」
 「残りは?」
 夏目は立ち上がってベランダをあけた。猫が数匹入ってくる。
 「リュウノスケ、お前らもご相伴にあずかるか?」
 「猫はワイン、飲みません。何か違うものをあげますね」
 にぎやかな夜だった。そして猫たちが去り、電気が消える。

 「さてと、バイト行かないとな」
 「そうですね。お気をつけて」
 「うん」
 玄関ドアを開ける。そこに広がっているものはいつもの風景だった。
 「行ってくるよ」
 「いってらっしゃいませ」
 電車で数駅というバイト先。夏目が昼休みに外に出ると、それは始まった。


草うららか |MAIL

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