気まぐれ日記
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うーもう、九月も後半ですね。早く感じるのは歳のせいですか? まだそんな歳じゃないような気もしますが。
「死体が動くって、どういうことかしら?」 「妖精だろう。いたずら好きな妖精がいると聞いたことある」 「しかし、いたずらがすぎると妖精は妖魔となるのだ」 食事が終わり、三人は馬小屋に戻った。おばさんが気を利かせてルイはおばさんの家の空き部屋に寝かせてもらうことになったのだが、寝る前に三人は集まる。 「へー、妖魔になるんだ」 ルイは素直に感心した。バルクは妖精など信じてなかったのだが、妖精主に会うわ魔王に会うわで、もう何も感じていない。 「妖精がしわざとなりゃ、物好きな妖精だよな。死体に宿るなんてよう」 「人が驚くのを見るのが好きなのだよ、そんなのが多い」 「やだなー、だからって死体に宿るのは」 「それより、ルイ。説明してもらおうか?」 「何を?」 「おぬしが慌てていたわけだ。小生もバルクも巻き込まれたのだ。聞いてもよかろう?」 ルイが都合悪そうにしていたが、話し始めた。 「あのね、あたし、おばあちゃんの後を継いで総統にならなきゃいけないの」 「総統?」 「悪魔族は総統というのだ。統べる者の名として。王様みたいなものだ」 「ふーん……って、ルイ、お前、じゃあお姫様ってことか?」 「そうじゃないわよ、普通に過ごしていたわ」 普通とはどうゆうもんか? バルクは自分の身に置き換えてみる。彼もまた、王族なのだが、王族らしいことは自分はしていない。 「でも、遅かれ早かれ、総統の座に座らないとならないの。でも、まだ座りたくない」 ルイはそこで口を閉じた。アニムは直感的に、まだあるなと思っていたがそれ以上は聞かなかった。 「わかった。ちょうど暇をしていたのだ。しばらくルイに付き合ってもよかろう、なあバルク」 「……うん、ああ」 バルクはまだほけっと昔を思い出していた。 「どうした? バルク? 疲れたのか? いい歳だものな」 「はん、おめーに言われたかねーな。そんなことはともかくだ。俺はいいぜ、どうせやることもまだ見つかってねーし」 「ありがとう、バルク、アニム」 「さて、逃げ回るのだ。どこへ行く?」 「お前なあ、ここが南クレンムのどこかもわからんのに」 「どこにいようと目的地も決めんで、どう動ける?」 「どうせなら、行ったことのないところがいい」 「では、な」 アニムが荷物から四つ折にしたふるい紙を出した。開くとそれは簡易的な世界地図だった。もっともあまり正確ではないが。 「ここがいまいるところだ」 アニムが右下、つまり南東の広い大陸を指した。 「この小さな四つの塊は?」 ルイが真ん中より少し上にある四つの島を指す。 「そこは行ったことがあるだろう。四神諸島だ」 「フォーランズがあるところね」 「確か、あの時はビアソーイダには行けなかったな、バルク」 「じゃあ、ビアソーイダに決まりね、バルク」 「お、お前ら……」 「エールでは酔えぬだろ、バルク」 「確か名産がチョコレートなのよね、バルク」 「……勝手にしろ、もう寝る」 気落ちしたのか、疲れたのか、バルクはベッドに入った。 「小生も寝るか」 「そうね、じゃあお休み、アニム」 「ああ」
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