気まぐれ日記
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2003年09月21日(日) 今日は日曜日なんですが(再び)

 ノリに乗ってんで、昨日の続き書きます。

 翌朝、ルイは早くに目覚めた。家は静か過ぎた。リビング(昨日夕食をご馳走になったところ)に入ってもおばさんの姿はなかった。台所にも寝室にもいない。
 「畑仕事にでもいったのかな?」
 馬小屋のほうにも行ってみる。アニムはすでに起きていた。
 「おはよう、アニム」
 「お早う、ルイ。ずいぶん早いな」
 そういうアニムはいつも早い。ルイは思う。
 「おばさん、見なかったよね」
 「ああ、見ないな」
 「やっぱり畑仕事かしら?」
 「そうかもしれんな。田舎というのは早いからのう」
 散歩がてらに農作業の手伝いでもするかと、アニムはバルクをたたき起こした。バルクがしぶしぶ起きて着替える(おばさんは寝巻きも用意してくれた)と三人は畑のあるほうに向かった。
 「誰も、いない」
 村中がしいんとしている。三人の胸中に不安が広がった。
 「ああっ!」
 アニムが突然叫んだ。
 「どうした。びっくりするじゃねえか、アニム」
 「死体が動き出す……村全体がそのような状態だったとはのう」
 「そうか、あのおばさんも動き出した死体?」
 「でも、死体じゃなかったみたいよね」
 「うーん……」
 三人は黙ってしまった。が、腹が減った。
 「なにか、食べるもんあるか?」
 「勝手に食べちゃっていいのかな?」
 「腹が減っては戦はできぬが……」
 村中を探しても何もない。
 「じゃあ、昨日食べたものはなんだったの?」
 「なんだったのだろうかのう」
 疑問だけが増えてゆく。アニムは仕方がなく携帯食の乾パンやら干し肉やらを二人に分けた。
 昼近くになっても何かが変わる気配はなかった。アニムとバルクはそれでも何かないかと探して、食べられる木の実や果物を採りにいった。
 ルイは一人で留守番していた。畑にはまだ葉っぱしか生えてない人参。別の家を覗くときれいに整頓されている。かまどになべが置いてあってスープが入っている。でも誰もいない。
 「こういうの神隠しっていうんだっけ?」
 実際神族はそんなことはしない。ルイはふと可笑しくなった。
 「そうね、そう言うわね」
 ルイが驚いて振り向く。白いローブを着た女の人が笑っていた。
 「驚いた、こんなところに女の子がいるんですもの」
 「あなたは誰?」
 「ごめんね、驚いた? 私は聖職関係の仕事しているの」
 「聖職? シスターとか?」
 「シスターとうのはどうか知りませんが、神に仕える身であればそうなのでしょう。私は魂を沈める者です」
 「そう、なんだ。じゃあ、ここに夕べ人がいたのは幽霊?」
 「周辺の方々はそうおっしゃいますが、私も実際見てみないとわからなくて……」
 ルイは、自分のほかにも二人の連れがいることを教えた。そして、夕べの話もした。
 「それで、その二人は?」
 「そろそろ戻ってくると思いますけど……」
 ルイの言うとおり、二人は戻ってきた。アニムは川魚を釣ってきたらしくその辺に放ってあった籠に入れてきた。同じくバルクも果物やら木の実やらを籠に入れている。ついでに狩りもしたのかウサギも片手にあった。
 「二人ともさすが……」
 ルイは感心してあきれた。それがこの二人の強さなのだが。
 「おい、ルイ。この人は?」
 「あのね、聖職者の……」
 「カルミアです」
 「ふーん。フォーランズの火神巫女か」
 バルクがぼそりと言う。
 「よくご存知ですね」
 「ああ。王家にいる家庭教師には苦労するだろ」
 「ええ、もう、巫女の身は男性の方とはお付き合いできないと言っているのに……って、よくご存知ですね」
 「まあな、で、そのあんたが何故ここに?」
 「ああ、はい。依頼されまして」
 二人が話している間、アニムは手際よく魚を枝に刺し、ウサギをさばいた。ルイはアニムに頼まれ火をおこしている。
 「それで、ここの幽霊を沈めるためにわざわざ南クレンムに?」
 「はい。報酬は王族からもでるので」
 「あんた一人でか。じゃあ、あんたただモンじゃねえな」
 カルミアは黒髪の華奢な女性だった。しかし、いくら相手が幽霊でもそんな彼女を一人、出させる理由は決まっている。
 一人で十分ななにかが備わっているからだ。
 「魚はそろそろいいぞ。早く食べないと夕方になってしまう。夕方になる前に村の入り口に戻るのだ」
 香ばしいにおいに携帯食しか食べてないバルク、ルイはうなずいた。
 「私も、いただいていいでしょうか?」
 「どうぞ」
 カルミアも魚を手に取る。
 「でも、なんで村の入り口に戻るんだ?」
 「確かめることがあるのだ」
 アニムも魚にかぶりつき、言った。


草うららか |MAIL

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