気まぐれ日記
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クレンムチューリ。チューリップのようなクレンムにしかない花です。名前はそのまんまです。以上。
店の人の話によると、クレンムチューリは二年ほど前から急に自生をはじめた。人の手を借りず雑草のように増えていった。最初は気味悪がっていた町の人々も、春になると愛らしく咲くその花に、今では気に止めなかった。だから店先においても売れなくなり店の奥に引っ込めていると言う。 「ありがとうございます」 カルミアが例を言って立ち上がった。 「そうかい」 「あ、お茶が売ってる」 「ああ、ハーブティーだよ」 「あの、これください。おいしいのを」 「じゃあ、これにしましょうね」 ハーブティーを一つ取って袋に入れ渡した。ルイはお金を払うとカルミアとともに店を出る。 「お金、持ってたのね」 「うん、少しね」 カルミアはそれ以上は何も言わなかった。代わりに、 「多分、この町の人は知らないでしょうね」 と、いう。 「何を?」 「クレンムチューリはね、幻覚作用を持つ花なのよ。特に球根を食べると一生ものの幻覚に陥るの」 「? 幻覚?」 「私が思うには、このクレンムチューリを使ってあの村を幻覚状態にしてしまったのじゃないかって」 「それじゃあ、あたしたちが見たのは?」 「クレンムチューリによる幻覚ってことも考えられるわね」 ルイには信じられなかった。悪魔は薬物に惑わされることはあまりないはずなのに。 「あたしにも、幻覚が見れるんだ」 「でもね、どうしてそうなっちゃったのかまだわからないわ。まだ、調べる必要がありそうね」 「そうね」 少し、上の空でルイが答える。それを知らない振りしてカルミアは言った。 「そろそろ戻りましょ」 二人は宿に戻った。
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