気まぐれ日記
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2003年10月22日(水) 日本語で遊ぼう

 NHKの番組です。なんの変哲のないタイトルですが、その異様な空間と言ったら……。何がって小学校にもあがってない子供が古文の名句ををすらすらと朗読する姿が別世界です。(いや、それだけじゃない!)でも、古文や現代文で悩んでる学生さんはこれを見るべきかも?

 「やっと、待機終了か」
 彼は寝床から身を起こした。寝床と言っても葉っぱをかき集めた野宿よりも酷い寝床だったが。頭には葉っぱが何枚か引っ付いてきている。さらに虫に刺されたのか痒かった。
 「ともかく、あの村にはもう用はない、と」
 昨日、少女の母親から子供と遊んだお礼と言ってもらったパンを彼はちぎった。そして口に入れる。
 「あ、うまい」
 黙々と食べて喉に詰まらせる。何とか飲み込んで、さらにもう一個をほうばった。
 「おはようございます」
 「もご」
 彼はまだ口の中にパンが入っていた。突然現れた少年に、ようと言っているようだった。
 「長い間ご苦労様でした」
 何か言いたげだが、飲み込めないでいる。
 「飲み込んで殻でいいですよ。喉詰まらせないでくださいね」
 それで、彼は噛んで飲み込んで、一息ついた。
 「久しぶりだな」
 「ええ、お元気そうで」
 「で、どうなんだ」
 「この村ではないですね。つまり無駄ってことです。次よろしくお願いします」
 「またかよ」
 彼はやや憤慨して少年をにらんだ。しばらくあの村にいたのは、少年の探し物のためだった。
 「お前の言う、探しもんはどこにあるんだよ。つーか、探しもんすらよくわかんねえし」
 「物とかじゃないんですよ。ともかく、あなたではないと探せないものらしくて……特殊な魔力には特殊な魔力を持つあなたではないと見つからないんですよ」
 「ふーん。俺が反応したらわかるってか?」
 「そんな感じです。さあ、次は城下町です。アパートとって置きますから、そこに住んでください」
 「お、待遇いいじゃん」
 「城下町はさすがに広いですからね。かなり長期になると思います」
 では、よろしくお願いします、と少年は文字通り消えようとした。
 「ちょっと待てよ、魔王」
 「なんですか? 僕だって忙しいんですが」
 「バイト料と必要経費くれ。あとなんか財布代わりになるやつ」
 「……さすが、そういうことは忘れないんですね」
 「ったりめーだ」
 魔王と呼ばれた少年は渋々と金と巾着袋を渡して今度こそ消えた。
 

 


草うららか |MAIL

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