気まぐれ日記
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物語の方向がなんか変だなあと思いつつ、当初の目的は忘れていない…と思う。
「魔法使い? 人間か?」 人間の魔法使いは、もういない。魔術を使う人間はいるが……。 「人間だ。魔族ではなさそうだしな」 「……そいつ、どこにいるんだ?」 バルクには心当たりがある。一年前だが、それに会った。 「今は客間で寝かせているが……」 「何があったんだよ」 「よくわからんが……フレクア!」 国王が呼ぶと、少女がさっと現れた。 「なに? 父様?」 栗毛を長い三つ編みにした十四,五歳の少女だった。 「あの魔法使いとやらは?」 「まだ起きないよ。ところで、誰? 父様のお友達?」 「すまんな、教育不足の娘で」 「ああ、気にすんな。何しろフレクアはまだ赤ん坊だったしな。俺は、お前の親父の弟、つまりは叔父だ」 「うん、納得。じゃあ叔父様。後ろにいる人も紹介してよ」 「それよりだ、あの魔法使いはなんで眠ってしまったんだ?」 「父様が脅したからじゃないの?」 と、フレクアがあきれて言う。 「殺気は感じなかったが、邪気は感じられた。だから根性直しにやきをいれたが」 「初対面で出会い頭で、いきなりはまずいと思うよ。いつものことだけど」 「兄貴、んなことやってんのか?」 バルクが情けないような、あきれたような顔をする。 「ああ、でもね、魔法使いさんが母様の前に立ったとき、『これのことか』って言ったの。でね、なにかつぶやいたんだけど……その後すぐ、寝ちゃったの」 「……わからん」 「でしょ」 国王は、しばらく黙って口を開く。 「まあ、久しく帰った弟を追い出すことはせん。ヒーガル、こんな状況だがゆっくりしていけ。紹介や話は夕食の時にでもしよう」 「サンキュー兄貴」 「フレクア、すまんが客間に案内してやってくれ」 「はい、父様」 国王は自室に戻る。フレクアはうれしそうにバルクの前に立った。 「では、ご案内します。叔父様」 「……お前、さっきと口調ちがわねえか?」 「父様の前では、です。こちらです」 フレクアが案内したのは、魔法使いが眠っている部屋の隣だった。 「女性の方には、こちらをどうぞ」 さらに隣の部屋も開ける。 「ありがと、フレクア」 「いえ、私、お客様、大好きなんです」 「ところで、フレクア」 「なんですか?」 「大浴場があるって聞いたんだけど……」 「ご案内します。私も入ります」 二人は仲良く、大浴場へ向かっていった。 「女の子同士って、ああやって仲良くなるもんかのう?」 アニムがにやにやとしてバルクに聞いた。 「さあな。さてレト。もうしばらくこの城にいることになるが」 「いいよ。本当は早く連れて帰りたいんだけど、しょうがないしな。だけどこの城、何かある……」 野生の感というものか、レトは無理に落ち着こうとしている。バルクはそれに感づいていた。同じようにアニムも平静を装ってはいるが、腕を組み替えたり、頭をかいたりするしぐさが何度も見られる。 「じゃあ、ちょっくら、このドアを覗くか?」 バルクは魔法使いが眠る部屋のドアを指差した。
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