最近、とあるレポートに追われていてめっきり読書量が落ちております。 締め切りは25日(郵送だから23日か)、早く終わってください。 読みたい本は溜まる一方なんですがねぇ。
今日は第一回近代文学ゼミ開講。 とはいえ、鏡花専攻のT女史(M1)と川端専攻のK氏(M1)が集まった中に 無理やり参加させてもらっただけだけど・・・大変勉強になりました。 今回の課題は泉鏡花の初期代表作品『外科室』でありましたが、 私が初めて読んだ鏡花作品であり、一番大好きな作品でもある思い出の一作。 恋愛の瞬間美が凝縮された壮絶なまでの一作なのであります。
本日の一冊 ・『外科室』(『外科室・海城発電他五篇』より:泉鏡花/岩波文庫)
病院に運び込まれた伯爵夫人に麻酔なしでの施術に挑む外科々長高峰医学士。 実は2人は以前一度だけ道ですれ違った時に覚えた恋心を ずっと胸中に秘めたまま9年もの歳月を過ごしてきたのであった。 言葉を交わしたわけではない、目と目が合っただけでもない。 ただすれ違っただけ、その一瞬のときめきを成就させるための手術なのである。
「痛みますか」 「否、貴下だから、貴方だから」
伯爵夫人の必死の声、麻酔なしでの執刀など断末魔が響きわたる地獄絵図である。 しかし、一方の作品世界は驚くほどに静まり返っていくのが分かるのである。 立会の医師も、看護婦も、家族も、何もかもの気配が少しずつ消え去り、
その時の二人が状、あたかも二人の身辺には、 天なく、地なく、社会なく、全く人なきが如くなりし。
まさに、伯爵夫人の壮絶死によって、2人は2人の世界を作りあげたのである。
『外科室』は短いながらも上下構成、 上巻で完璧な静寂世界を作る一方で、下巻は俗世間の騒々しさが見られる。 そこで、2人のすれ違いの場面が描かれるのであるが、 悲しいほど一瞬でしかない、このために死を選んだのかと思うと泣けてくる。 初期であるからこその荒削りな部分も多く見られ、問題点も残るのであるが、 その若さゆえの青臭い瑞々しさが今なお失われずに残る今作品。 是を知らずに鏡花を語ることなかれ・・・声を大にして私は言いたい。
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