本日の一作: ・『ガラスの麒麟』(加納朋子/講談社)
短篇が少しずつリンクして最終的には大きな流れを作る・・・ 加納女史お得意の作品の作り方がここにも反映されているようだ。 しかし、今作品は舞台が学校ということもあり、またも心の琴線に響く。 特に面白かったのが「三月の兎」という短篇であった。
「三月の兎」の中の中心人物は小幡先生という英語教師。 女子高で英語を担当している彼女の口癖が非常に面白いのだ。
「――何度も言うようだけどね、あの子たちは絶対に宇宙人よ。 エイリアンだわ。地球を侵略に来たの。全然理解できないし、 できるとも思えないし。正直言って、なんだか嫌になっちゃうわ。 教師になって、いいことなんかほとんどなかったわ。」
この台詞をもっと軽い程度にすれば、私だってよく言っている。 電車に乗っている男子学生や街を闊歩している女子高生、 卒業してからもう5年も経ってしまえば、様子だってガラリと変わるものだ。 「私達の時ってああだっけ?」 卒業生の常套文句の一つである。 だから、今の私は小幡先生サイドの人間だっていうことになる。 ということは・・・ もしも、この小説をまさに高校生だった頃の私が読んだらどう思うのだろう? 私でなくても今の高校生達が読んだらどう思うのだろう? どうせならもっと早い時期に読んでおけばよかった、後悔しても詮無いことだが。
もう一つ、最後の小幡先生の言葉にジンとくる。 1年でたまーに訪れる嬉しい瞬間のために残りの時間を頑張れる・・・ 教師の真理だなぁと思う。 楽しいことばかりある職業であるはずがない。 それでも、あらゆるつらいことを帳消しにしてしまえるぐらいの瞬間とは、 いったいどういうものなのだろう・・・早く味わってみたいものである。
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