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2002年09月18日(水) 土から生まれた姫君。(2

老夫婦が連れ帰った樹は、
半年で美しい娘になりました。

7歳までは1日に1歳、年をとり
15歳までは1週間に1歳、年をとり
18歳になるまでは1ケ月で一歳、年をとり

あとは年を取らなくなった。

花のような容姿
水晶のような笑顔

その美貌ゆえ、周辺では大層評判となり
その姿をひと目見たいと男達がこぞって
家の周りに集まり、
女達は羨望したのでございます。

また
樹のそばにあった財宝を売り、
長者になった夫婦は
樹のために考え得る出来る限りを尽くして愛しました。

しかし、樹にはひとつだけ出来ないことがありました。
老夫婦は、彼女の声を聞いたことがありませんでした。
赤ん坊の頃でさえ、泣き声ひとつ立てずに
彼女は涙をこぼしたのです。

老夫婦は、それについては悲しいけれども
こうして生きている娘が生きているだけで幸せだったので
彼女に琴を与えて、美しい音を家族で聞いたり
筆と紙を与えて、詩を楽しんだり
彼らは楽しく過ごしていたのです。

そんな中、老夫婦には気になることがありました。
あの日の神様の言葉です。

その子に真に愛し愛する者が出来るまで預ける。

つまりは、娘に愛するものが出来た時点で
神様はこの娘を連れて行ってしまう。
そうならないためにも、
娘を男の人に近づけるわけには行きません。
だから、老夫婦は家の塀を高く作り変え
家に男の人を一歩たりとも入れようとはしませんでした。

愛する娘を彼らなりに守ろうとしていたのです。

続く


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