日常妄想
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2001年09月25日(火) 『夢を見た』のこと。

+十二国記の新刊の、待望のホワイトハート版を買ったが、このシリーズよりも根深くハマっているシリーズの最新刊も同時に買ったため、まだ読了していない。上下巻で、上巻を読み終えたところなので、下巻に入る前にこちらを読んでしまおうかな、などとも考える。十二国記、今回は短編集なので、なにかの合間に一編一編読むのもいいかもしれない。←無理か(笑)

+で、夢を見た。十二国の夢。小説のように、古代中国のような世界背景が舞台なのではなく、夢らしく、目に見える風景は現代日本、しかも、自分の住む団地の下である。そこに居るひとはたちは、いきなりかの国から連れてこられたように、衣装だけは自分達の国のものを身に着けていた。まわりの風景とそぐわない。まるで仮装行列でも始まるのかといった風情だ。

+わたしは、黒麒だった。本編において唯一の黒麒麟である泰麒だったのではなく、新しく役目に就かんとしている麒麟である。人型をとっている。長い黒髪の青年だ。日本の狩衣に似たような形をした中華風の、くすんだ黒の、だぶだぶの衣装を着ていた。
外見こそ違うものの、キャラクタアといえば、ぬけさくであがり性という、わたしそのもの。周囲のひとが寄ってきて、膝をつき、深々と頭を下げて挨拶をしてくるので、恐縮に思い、緊張しつつ、自分も座って頭を下げようとする。が、元来、麒麟は自分の選んだ王以外の人間には、額ずくことができない生き物である。わたしは、「あ、いやっ、すみません、これはできないのでした」などと、困り笑いをしながら、間抜けなことを口走る。しっかりしろ!!(笑)。

+そこへ、陽子のような、赤い髪の、男の格好をした女王が現れる。どこかで見たような顔。黒い服。色こそおなじだが、こちらは、簡素な人民服のような形の服だ。黒麒=わたしは、光栄な気持ちで、さっきのしどろもどろな様はどこへやら、きちんと難しい言葉を並べ、延々と行われてきた形式、そして麒麟の血にのっとり、その足元に額ずく。
本物の十二国と違うのは、既に王が決定していたというところ。麒麟が選んだのではないのだ。だが、わたしは心強く、満ち足りた気分になっている。キアイでも入ったのか、髪を、ゆるくひとつにまとめてみたりなんかしている。昔、髪を伸ばしていて、実際に結っていた時期があったので、髪を縛る感覚がハッキリと感じられる。

+そして、いくつかの奇妙な会話を交わす。王は、漫画絵ではなく実写世界なので顔こそ違うが、しゃべりかたも陽子のようだ。

「わたしはどこの麒麟なのでしょう?」
「わたしは慶王。おまえは慶国の麒麟。慶麒だ」
「慶国…慶、麒……えっ、では、あの慶麒は? 慶王は!?」
「――」


『麒』というのは雄の麒麟、ということ。雌は『麟』。わたしは自分が男だというのを、ここで初めて意識する。そして、信じられないような事実に気づいて、愕然とする。この台詞で言う『慶王』、『慶麒』とは、実際の物語に出てくる、あの陽子と慶麒のことだ。この先のことは、よく覚えていないので、このとき、目の前に立つ王が、かれらのことをなんと言ったのかはハッキリとは思い出せないのだが、失道して臥せっているか、なにかで命を落したかで、とにかく失脚しているのである。(ファンとして、とんでもねーことです・笑)

++++++++++

+結局、小説のようなストーリイ然としたストーリイは無く、ビジュアル的なものばかりが、そして感情が、鮮明に記憶に残っている。前回の夢とおなじように。夢らしく、視点も変だ。わたしはそこにいる黒麒でありながら、自分の姿を客観視している存在でもある。アニメやドラマをテレビで見ているような視点で、自分の姿を見ている場面もある。このあたり、ずいぶんナルシストなのだなぁと、苦笑せずにはおれない。もちろん、そこにあるのは現実のわたしの姿ではなく、顔つきは覚えていないが、黒麒のわたしはスラリとそこそこに背が高く、背中の半分ぐらいの位置まで伸びている真っ黒な直毛が、つやつやと綺麗でした(笑)

+まだ未読の最新刊を眺めては、「早く読みたいなぁ」と思っていたので、そのせいで夢に見たのかもしれないのだが、自分では、それだけの理由ではないのだ、という確信がある。自分が麒麟であること。珍しいとされる黒麒麟であること。これはつまり、誰かと特別な絆を持ちたいと考えているということ、ひとに特別視されたい、注目されたいと考えている、ということだ。それは、いかにも自分の考えそうなこと…というレベルの話ではなく、いつも自分が考えていることそのもの、なのだ。自分の願望が、そのまま夢になって出てきた、と言えるのだった。

+王と麒麟の関係は、わたしのいちばん好きな小説『パーンの竜騎士』シリーズにおける、騎士と竜との関係に似ている。騎士と竜は、見えない絆で常に繋がっている。騎士は、卵から孵化したばかりの竜によって選ばれ、死によって引き離されるまで、心や感情をわかり合う無二のパートナーとして生きる。その絆は強く、片方が命を落すことがあると、残された片方は、精神を病んでしまうか、自らも死を選ぶこともある。
十二国記における、王と麒麟も、そうなのだ。麒麟が王を見い出し、見い出された王と麒麟は、その先の運命を、共に歩いてゆく。揺るぎ無い、確かな絆で結ばれている。それぞれを補い、伸ばし、叱咤しながら、国を治める。王が、人道に悖る行いをすると、麒麟は病んでしまう。これを失道、という。麒麟が失道すると、国の治安も、王自身も無事ではいられなくなる。麒麟が死ねば、王も死ぬ。また、王が死んでも、死ぬ前に麒麟を神に返してやらない限り、麒麟もまた、死を得ることになるのだ。

+この得難い、貴い絆が、パーンと十二国記、両シリーズの大きな魅力のひとつになっていると思うのだが、創作の物語のことであるとはいえ、かれらの絆が、わたしには、とてもうらやましい。焦がれるくらいに、うらやましい。どちらかがどちらかに服従する、というのではない。ツーカーの仲、というのかな…気の置けない仲、というのか。ふたりでいるのが当たり前で自然なこと、というくらいの、お互いの存在感。(一部擬人法ですな・笑) なにしろわたしは、何回も書いてきたように、人間関係において、いつも疎外感を持ち、不信気味でもあり、寂しさや切なさ、やりきれなさを感じているので、喉から手が出るぐらいじゃ表現に足りないぐらいに、こうした、かけがえのない固い絆が、自分にも欲しい、と願っている。


(18:21 UP)


書いてる人:ミァハ(双星たかはる)
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