++ワタシノココロ++
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朝。やすくんから電話。 やすくんが泊まっているホテルは、山の中なので 電波の入りが悪い。 話している途中で何度も切れる。 出勤前の忙しい時間の電話はできるだけ早く切ろうって 離れて暮らしていたときは思っていたのに、 なんだか切れても切れても電話をかけてしまう自分がイヤ。
やすくんに心配をかけてしまう自分がイヤ。
やすくんを頼ってしか生きてない自分がイヤ。
どんどんネガティブになる自分がイヤ。
・・・いつの間にこんな嫌なオンナになっちゃったんだろう。
考えても考えても、嫌なことばかりしか浮かんでこないから、 できるだけ余計なことを考えないように 部屋の片づけをしたり、アイロンをかけたり まだほとんど汚れていない換気扇の掃除をしたり とにかく、無理矢理にばたばたと動き回っていた。
今日は外には出たくなかった。 こんな自分を誰かに見られるのがイヤだから。 そう考える自分がイヤ。
電話が鳴る。 しらない番号。
「もしもし?俺。大丈夫?無理しちゃダメだぞ」
不意に聞こえてきたやすくんの声。 暗い自分に気づかれたくなくて、妙にハイテンションな私。 「今日は天気がいいから、ちょっとドライブでもしてきなよ。 まだ道全然わかんないだろうけど、 ナビで自宅設定にしておけば、家には帰ってこれるんだからさ」
「わかったわかった、時間があればいってくるよ」
何も予定なんてないのに、そんな風に答えた私。 出ていく気はさらさらなかったけど、 牛乳と卵が切れていることに気づいて 仕方なく、近所のスーパーまで出かけることにした。
アパートの階段を下りて、駐車場に出てきたとき。
・・・・・・・・・雪?
辺り一面を舞う白い何かが桜の花びらだって気づいたのは ほんの少し後。
知らないうちに、もう散り始めてるんだ。 思えば、部屋の目の前に立っている桜の木に 目をやる余裕すらなかった自分。 すぐそばに明るい太陽が照っていたのに 敢えて背を向けて、暗い方ばかりを見ていた自分。 そんな自分の丸まった背中に気づいた。
スーパーに行って、牛乳と卵とバター、それに やすくんには内緒でコーヒーゼリーを買って 車に乗り込む。 家を通り越して、ほんの少しのドライブ。 下ばかり見ていたら、アスファルトや石や 通り過ぎる車のナンバーしか見えないけど、 少し上をを見渡せば、この前とは明らかに違う うっすらグリーンに色づき始めた木や、 桜の次に咲き始めた色とりどりの花々が 目に入る。
背中を丸めて、下ばかり見ていた自分。
前を向いて歩かなきゃ。
できることが何かあるはずだから。
ネガティブな私は、まだ心の中に残っているけど 少し日の光が射したような気がした。
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