行ってきました、茂山狂言祭。 観てきました、妖怪狂言。
妖怪狂言とは、小説家・京極夏彦が狂言のために書いた話で、妖怪が主人公の話です。
最初は『狐狗狸噺(こくりばなし)』で、無職で無宿の男が嫁入り行列からはぐれた嫁(長者の娘らしい)と出会います。そこへ山犬(狗)が現れ、ふたりを食べようとするのですが、旅の僧に救われ、お礼に寺再建のために寄付をします。でも、それは実は狸で、狸に化かされた二人は何度も寄付をして、しまいには文無しに…。一度は退散した山犬が戻ってきて狸と揉めるが、娘が寄付した金は木の葉で、長者の娘は実は狐でした。…化かしてるはずが、実は化かされ、獣が獣を化かす…ざっと、説明するとそんな感じ。人が人を化かす時代だから、獣が獣に化かされても不思議はないんですって。
これじゃなんだかわからん!…という方は、機会があれば一度ご覧になってください。ものすっごく笑えます!絶対、損はしませんよ! これこそ、観た方にしかあの面白さはわからないでしょうね。 本当に、尻尾を巻いてから逃げる山犬は秀逸だったと付け加えておきます。
しかし、狂言とはなんと洒落てて風刺が効いてるのでしょうか。 京極さんらしいといえばらしいい話運びなのですが、小説のような小難しさはありません。茂山の方々が表情や所作などでもわかりやすく噛み砕いてくれてるので、何も考える必要などなく、ただ笑っていればいいのです。 ただ、意味を考えれば痛切な風刺が盛り込まれていますけどね。
その次は『豆腐小僧』。 臆病な妖怪の豆腐小僧は破れかけた笠と手に持った豆腐がトレードマークの妖怪です。妖怪のくせに人間を驚かせたことがなく、一度でいいから驚かせてみたいと思って、太郎冠者にそそのかされるまま、太郎冠者の主と次郎冠者を怖がらせようとします。だが、主は怖がるどころか豆腐小僧の豆腐を食べたいと言い出すし、その時、雨が降ってきたので、太郎冠者は豆腐小僧の被っている笠を主に渡してしまう。そして、豆腐さえも取られると、それを持った主は豆腐小僧となり、どこかへ去ってしまいます。豆腐小僧は…豆腐小僧ではなくなり、太郎冠者、次郎冠者の主となりました。
説明すると、これだけの話なんですけど…私はこの話が一番好きです。 豆腐小僧をやってらしたのは茂山千之丞さんだったんですが、豆腐小僧と名乗った時に『何で、じい様なのに小僧と名乗る!?』って思ったのを見透かしたかのように『爺なのになんで小僧って言うんだとお思いでしょうが…』ってなことをいうんですよ。(細部は違います)ものすごく絶妙のタイミングで。 きっと、ここで笑った方は心の中でそう思ってた方ですね。<私もそう…(^^; しかも、ものすごく哀れになるような情けないお顔で…。 誰も知らないといわれて泣きそうな顔になっていったり、妖怪のくせに情けなさ過ぎるところがとても親しめます。 お爺ちゃんなのに、なんだかとってもラブリー。 なんだか、俄かに妖怪バカになっていきそうな気がします。 昔から、妖怪とかの話は嫌いじゃないだけに…はまったらどうしよう。
…参りました。m(_ _)m
これだから伝統芸能は馬鹿にできないですね。 おそろしや〜、おそろしや〜(笑)。
もうひとつは『首引き』で、どれもこれもたっぷりと笑わせていただきました。 (こちらのあらすじは割愛させていただいて、狂言関連のHPででも見つけてください。) 普通、面を通してだと声が多少くぐもるものなのですが、くぐもっていても尚且つ、声が明瞭であったというのは流石です。 やはり、役者というものはどのようなフィールドであっても、先ず『声』ですね。 歌舞伎(だったかな?)で『一.声、二.姿、三.演技』というらしいですが、それを聞いたときには『なるほど…』と思ったものです。
…狂言でもこんなに笑ったのははじめてでした。 もう、今まで観た中で一番好きです。 最初は千作さんが出演する回ではなかったので、がっかりしましたけど、全然、不満を言う暇なんてなかったです。 茂山は…息がぴったりで掛け合いがとても面白いです。 これで若手の子達がもう少し色気があったら無敵ですね。 (女性の役をやっているのに、艶やかさが感じられないんですよ〜。『美男』っていう設定なのにそれが感じられないとかね…) がんばって〜!(^^)
狂言を観たことがない人にも…というか、観たことがない人にこそ、オススメです。 そういう人たちへの取っ掛りになってくれたらいいですね。 伝統芸能だからって堅苦しいわけじゃないし、若いお姉さんたちがTシャツやジーンズで気楽に観てるし、楽しめるし、元気が出ます。
しかし、国立だけあって名古屋よりいい能楽堂でした。 シートが広い〜。 隣は空席でしたので、非常にのびのびとリラックスしきって観てました。絨毯もふかふかでした。 ただ、場所が千駄ヶ谷ってのが不便なんですけどね…。
……うっかり、乗換えを忘れてそのまま2駅先で気づいたから。 気づいた時にはドアも閉まりそうだったという…お約束の展開でしたし。 能楽堂自体が、住宅地の中にあるから、ちょっとわかりづらいよ。 田舎者の為にもう少し、わかりやすい建物にしてくれないだろうか。 あと、休憩できるところをもう少し増やしてくれたらいいのに…。 近くにはレピシエくらいしかなかった…。 以上、田舎者の愚痴でした。
あと、いい忘れていたことといえば、お家が京都だけあってめちゃめちゃいい着物でした。着物だけでも、一見の価値はあります。
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