解放区

2013年01月23日(水) 症例検討:20代女性

20代女性。

子どものころからのびのびと食べたいものを食べて育ち、結果まるまると育った。保育園卒園前に、担任の先生から「肥満教室」に通うように言われる。小学4年生のときに学内相撲大会で優勝。

小さいころから喘息あり。吸入薬で治療してきた。それ以外は内科的既往歴なし。体の重みに耐えきれずに足首の骨を骨折したことあり。血圧正常、採血異常なし。酒はたまに飲むくらいで喫煙しない。食事は食べたいものを食べる。

昨年8月に、家庭の事情から兄と同居することとなった。兄の作る食事を食べたいだけ食べ続けた結果、2ヶ月で20kg減量。喘息発作もなくなり、現在薬はすべて中止している。

同居時に持って来た服はぶかぶかで着れなくなり、買い直すこととなった。


人間の健康は、食事内容で決まるものだと考えていたが、これほどまでの例は珍しいですね。さて検討を始めていきましょう。

1.朝食は中止。野菜ジュースを軽く飲む程度に変更した。
2.昼食は弁当。炭水化物を中心に、お米+適当なおかず。
3.夜は魚・豆腐主体。量に制限はなし。炭水化物は摂らない。
4.喘息対策として、ω3系の油脂を摂食的にメニューに入れた。逆に、ω6系はできるだけ摂らないように。
5.「酸化した油」は摂らないように、揚げ物は中止。炒め物もできるだけ減らして、煮物と蒸し物が中心。
6.タンパク質は魚と豆類で摂る。鶏と豚肉も使うが、煮るか蒸すかで使用。
7.加工食品は使用しない。野菜もできるだけ皮をむかない「ホールプラント」で使用。

運動量は特に変化なし。夕食も制限なし。これで減量にも成功し、喘息もなくなりました。めでたしめでたし。

ポイントは「加熱した油を取らないこと」「人間の自然なリズムを知ること」「できるだけ不自然なことはしないこと」ですね。では解説していきましょう。

1.ほとんどの人間は夕食をしっかり食べると思いますが、ここで得たカロリーはどこで消費するのでしょうか。夜の生活で消費? そんなに毎日頑張っているのですか? 夕食で得たエネルギーはほとんど消費されることなく、体の隅々に蓄えられるのです。たいていの方は夕食の後はゴロゴロして寝るでしょう。コレステロールなどの合成も夜中に活発に行われます。したがって、起床事は胃の中は空っぽですが体中の細胞はエネルギーに満ち溢れています。この状態で新たなエネルギーを注ぎ込む必要はありません。余分なエネルギーになり、さらにため込まれるだけです。したがって朝食は不必要です。

2.午前中労働をすると、夕食分からため込まれていたエネルギーが消費されます。中でもガソリンに相当する炭水化物が必要になりますので、昼食は炭水化物中心に食事を摂ります。ここで得たエネルギーは午後の労働に必要です。

3.夜は労働の必要はありませんので、ガソリンは要りません。炭水化物は吸収に当たり、完全に糖類に分解されてから吸収されますので、米を食べるときは常に「同量の糖分を食べている」と意識された方がよいでしょう。したがってたんぱく質中心のメニューとなります。たんぱく質もいろんなたんぱく質がありますが、できれば脂肪酸の関係からは魚及び豆類が最もよいでしょう。

4.喘息とは気管支の慢性炎症を来している病態です。炎症を起こす物質は、アラキドン酸由来です。ω6系の不飽和脂肪酸はアラキドン酸の原材料になりますので、できれば避けましょう。逆にω3をたくさん取ることで喘息の予防になります。

5−7.だんだんめんどくさくなってきました。またの機会にさせてください。


兄はストレスのきわめて多い職場で食事時間も不規則で、食べれるときにさっさと加工食品や弁当を食べるという生活をした結果、高尿酸血症・高脂血症・血圧もやや高め、血糖値も上昇しましたが、上記のような食事に変えた結果すべて改善しました。

ただし体重は変わりません。これはアルコール摂取が多いためだと考えられます。ただし肝機能は正常です。


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