2014年02月08日(土) |
初めての台湾旅行の思い出。 |
てめえが初めての海外旅行で台湾を訪れたのは、小学校六年生の2月だった。祖父の帰郷に付き合ったのだが、祖父は年齢的にもこれが最後の訪台だと考えていたようで、長男の長男である孫のてめえをどうしてもいっしょに連れて帰りたかったようだ。
そもそも当時は海外旅行に行くこと自体があまり一般的ではなかった。てめえの小学校時代、長期休みに海外旅行に行く友人なんて全くいなかった。てめえも、自分が海外に行くなんて夢にも思っていなかった。確か、パスポートも一回きりのものと5年有効のものがあったが、一回きりのパスポートの方が一般的だったと記憶している。なんせ仕事の関係でもない限り、5年に1回以上海外に行くことはなかったのだと思う。
祖父が台湾に帰るのは、てめえの父が大学生の時以来だったので、それ自体が十数年ぶりだった。
「台湾にはな、切れる爪切りがないからな。日本製の爪切りが喜ばれるんや」
と祖父はせっせと土産用の爪切りを購入していた。十数年前ならいざ知らず、さすがに今はそんなことはないのでは、と小学生のてめえは思ったが、嬉しそうに買い物をする祖父にそんなことを言うのは野暮だと思った。
最後の帰国だから、と、祖父は旧正月の帰国を望んだ。しかもラーメン屋も閉じた後だったので、一ヶ月くらいゆっくりしたいとの希望があった。
問題はてめえである。小学6年生の1月から2月、卒業式を目前に控えた状態で一カ月も休みをとることに、学校側は難色を示した。
とはいえ、最終的には「個人というか家庭の事情」が優先されるわけで、結局祖父母と私の3人で台湾を訪問することになった。
これはてめえにとって全くの未知の体験だった。飛行機に乗るのも初めてだし、そもそも国内旅行ですらあまり経験がなかったのだ。
何よりも、小学生にとっては友人たちと離れて大人だけの世界で過ごすということが何よりも怖かった。もうこのまま、自分だけが違う世界に行ったまま帰ってこないのではないか。
しかも両親とこれだけ離れると言う経験もなかった。まあそのあたりのことは正直どうでも良い。
出発の日のことはあまりよく覚えていない。現在と異なり関空はなく、伊丹から旅立った。
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