Sun Set Days
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2001年08月23日(木) |
台風の夜と、台風の朝 |
昔から、台風になると心が浮き立つという人たちがいる。もちろん、不謹慎だということは充分わかっているつもりなのだけれど、どうしようもないくらいに心が惹かれてしまう人たち。 彼や彼女はこう思う。
いつもと同じ街なのに世界の終わりのような街を見よう、 生暖かい風にくるまれてどんどん歩き続けよう、 子供の頃風に飛ばされてしまって、そのまま世界中を旅していたはずの帽子を見つけよう、
ということで、午前3時の街に繰り出しました。 もちろん、そこはそれなりに閑静な住宅街。 のん気に出歩いている人なんて誰もいません。 もしこれが世界の終わりなら、もうすでに僕は逃げ遅れています。 コンビニの明かりだけは普段と変わりなく周囲を照らし出していて、なんとなく安心して、ゆっくりと歩きはじめる。 車もたまに思い出したようにしか通らない。 風が強くて、散歩用のビニール傘は両手じゃないととてもおさえきれない。 一瞬、関口宏の顔が浮かぶが、気にしないことにする。
いつものコースをふた周りくらい縮小してゆっくりと歩く。 雨は降ってはいるけれどどちらかと言うと小降りに近く、ただ風の音と強さだけは半端じゃない。 傘とか、カバンとか、他にもいろいろなものが飛ばされてしまいそうだ。 一瞬、小林稔侍の顔が浮かぶが、気にしないことにする。
歩いているうちに、妙にテンションが高くなってくる。 もちろん、時間が時間だったし絶対に怪しいのだけれど(警察がいたら職務質問だってされてしまうだろうし)、 それでもこんな台風のちかづいている午前3時に散歩ができることなんかもうないかもしれない、という気持ちのほうが勝ってしまっていたのだ。 そういうところは本当にまだまだ子供だ。 とりわけ強い一陣の風が吹きつけてきて思わず目をぎゅうととじる。 一瞬、神田正輝の顔が浮かぶが、気にしないことにする。
いつもと同じ道路なのに、いつもより歩くのに時間がかかる。 少しずつ前に進むたびに、少しずつ後ろに引き戻されるような。 傘を横にして風をふせぐようにすると、不思議と雨があまり降りかからない。雨も横殴りに降っているので、傘は上にするより横向きにしたほうがよいのだ。 ほんとうに、ほんとうに風が強くて、いろんなものを飛ばされそうだ。 一瞬、加山雄三の顔が浮かぶが、気にしないことにする。
部屋に帰ってくると、もう午前四時近かった。 窓の外では、びゅうびゅうと風の吹きすさぶ音が聴こえているのだけれど、部屋の中に戻ってくるとそれもまた別の世界の出来事のように遠くなってしまう。 部屋のドアを閉めて鍵を回すだけで、いろんなことをとりあえずおわりにできてしまう。 単純な性質。 なんとなく充足感があって、聞茶を少し飲んでから眠った。
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今日は明日引っ越してしまう同僚を含めて、4人でご飯を食べに行ってきた。 最後ということで、ステーキを食べに行く(何かあると、すぐにニクになるのだ)。 結構ボリュームがあることで有名な店で、途中で全員がおなかいっぱいになってしまう。 いろんな話をしたのだけれど、そのほとんどが今日でお別れだという雰囲気が感じられないようなごく当たり前の話ばかり。 ディズニーシーに行きたいよねとか、 いままでに見た不思議な夢、恐い夢の話とか、 話題作が目白押しだった夏の映画で、何を観に行ったのかという話とか(ちなみに、僕は『ハムナプトラ2』と『A.I.』と『猿の惑星』を観た)。
気のおけない人たちとの他愛もない会話って、ほんとうに肩に力が入らない。 その日あったごくありふれた出来事を、ただそのまま伝えることができるというのはいいよなあと思う。
そういう同僚が転勤していってしまうのは寂しいものがあるのだけれど、別れはつきものだからしょうがない。 またきっとすぐに会えるはずだしね(願望だけど)。
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お知らせ
200も踏まずに済みました(ありがとうございます)。
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