Sun Set Days
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2001年12月20日(木) Sweet Melodies

 先週購入した『Sweet Melodies』は、Burt Bacharachの珠玉の名曲が全部で50曲も収められている魅力的な企画アルバムだ(2枚組)。
 そこには、大好きなアレサ・フランクリンの「I SAY A LITTLE PRAYER(邦題:小さな願い)」にカーペンターズの「(THEY LONG TO BE)CLOSE TO YOU(遥かなる影)」、それからクリストファー・クロスの「ARTHUR'S THEME(THE BEST YOU CAN DO)(ニューヨーク・シティ・セレナーデ)」も収録されている。こうして名前を並べてみるだけでも聴いたことのある曲ばかりの人が多いと思うのだけれど、それだけにバート・バカラックの幅の広さ、懐の深さのようなものを感じてしまう。
 トム・ジョーンズの「WHAT'S NEW PUSSYCAT?(何かいいことないか仔猫チャン?)」だってそうだし、プリテンダーズの「THE WINDOW OF THE WORLD(世界の窓と窓)」もそう。

 解説文に書いてある文章を引用すると、

 複雑でめまぐるしく変化する現代社会に生きる若いハートや傷つきやすいソウル、そのあこがれ、ときめき、笑い、涙、夢、勇気…を見事に表現したサウンドである。(3ページ)

 ということになる。
 本当に甘く、ロマンティックな感じの曲が多くて、人はいわゆる傷つきやすい年頃にこういう曲を聴いていくのがまっとうな育ち方なのかもしれない……とか思ってしまう。
 こういうポップスって、最近は随分と少なくなってしまったような気がする。
 もちろん、時代と共に歌は移り変わっていくから、それが悪いとかそういうことじゃないのだけれど(それがなんにせよあんまり悪いとか絶対とか決め付けることはしたくないし)、ただバカラックの曲を聴いていると、これは確かにエバーグリーン……って思えてしまうし、これはもしかしたら世代に関係なく胸のなかのどこか柔らかい場所に触れられるような音楽なのかもしれない……とも思えてしまう。
 そして、ほとんどの歌は愛の歌なのだ、不思議なことに、まあ、不思議でもなんでもないのかもしれないけど。

 昔の曲だからいまと違って結構邦題がついているのだけれど、歌詞カードから曲のタイトルに恋とか愛ってついている曲を抜き出すだけでも、これだけある。

 恋のとまどい
 恋よ、さようなら
 恋するメキシカン
 恋するハート
 愛の痛手
 恋の面影
 恋のウェイト・リフティング
 世界は愛を求めている
 素晴らしき恋人たち
 愛のおとずれ
 愛のハーモニー

 と以上、11曲もタイトルに愛や恋が使われているのだ。
 これは、かつてすべてのPOPソングが愛のことをうたっていると言った某アーティストの台詞にも頷けるほどの多さということができる。
 とまどったり、さようならをしたり、メキシカンだったり、ウェイト・リフティングだったり、いずれにしてもみんな愛とか恋を求めているということなのだろう。
 もちろん、恋のウェイト・リフティングってなんなのかよくわからないのだけれど。

 ということで、ちょっと細かくみてみる。

 邦題「恋のウェイト・リフティング」。
 サンディー・ショウの歌うこの曲は、原題が「(THERE'S)ALWAYS SOMETHING THERE TO REMIND ME」、対訳に書かれている訳を引用すると、「まわり中あなたを思い出させるものばかり」。
 この原題がどうして「恋のウェイト・リフティング」になるのかがまったくわからない。
 あ、でもこれは歌詞に関係があるんだ! と思い直して、歌詞カードについている対訳を全部読んでみる。

「町の通りを歩く……(うんうん)……一歩進むごとに思い出すわ……あなたを愛するために生まれてきたのよ……いったいどうしたら忘れられるの……(うんうん)……あなたを思い出させるものばかりあふれてるのに」

 出てないー!!

 一度もウェイト・リフティングっていう単語出てきてないんですけどっ!!
 昔の邦題って、かなりアバウトなところがあるよなあと、あらためて思う。

 ちょっと想像してみる。
 ぽわぽわぽわ……(←最近これ使いすぎですか?)


「○○さぁーん。サンディー・ショウのこの曲の邦題どうしますぅ?」
「ああ。あの曲ね。いい曲だよね。それに相応しいタイトルをつけないとね。なんかこう、胸にぐっとくるやつ」
「そうですよねえ」
「歌詞を読むとふむふむ……町の通りを歩いていても、彼のことを思い出すわけだ……せつないねえ。くるしそうだねえ」
「くるしそうですよねえ」
「苦しそうな表情が目に浮かぶね」
「そうそう。苦しそうって言えば、この間テレビでウェイト・リフティングの大会見たんですよー。すっごい重いやつをみんなすごーく苦しそうにして持ち上げるんですよー」
「へえ。ウェイトリフティングか……苦しそう…………それだ!!」
「え!?」
「ウェイトリフティングだよ! 恋の……そう、恋のウェイト・リフティングだ! ウェイト・リフティングをするときの苦しそうな表情と、彼のことを想うときの表情、まさに同じ!!」
「さすが○○さん! 大ヒット間違いなしですね!!」
「フッ、いつものことだよ……」

(※この会話はフィクションです)


 やれやれ。


 でも邦題はどうであれ、本当に、よい曲を聴くと、音楽のない人生は信じられないって、心から思う。
 そして、その音楽がほとんど愛のことを歌っているということは、たくさんのモノゴトのなかで、愛については感情移入しやすいということなのかもしれない。

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 お知らせ

 一人でクリスマスを過ごす方々に朗報です(?)。
 Text Sun Set は、24日も25日も連続更新の予定です。


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