Sun Set Days
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Pizzicate Fiveに「子供たちの子供たちの子供たちへ」という曲があるのだけれど、その歌詞のなかに、こういう部分がある。
真夜中に何か 食べたくて開けた 冷蔵庫のドアから 洩れる明かり
真夜中にひとり 小さな音で聴いた カセットテープから 流れる歌
真夜中に何か ぼくに話しかけた 名前も忘れた 古い友だち
これは一部分を抜粋しているのだけれど、それぞれ子供時代に思い当たるようなことがある人が多いんじゃないかと思う。 夜中に、怖い夢(や内容を覚えていないのだけれど妙に心細かったり不安だったりする夢)を見て、何かが必要だって思って、でもそれがよくわからないままただお腹が減ったような気がして、冷蔵庫を開けるときのつめたい安堵感や、布団をかぶったまま親に聞かれないように必要以上にボリュームを絞って耳を傾けた音楽(カセットテープばかりではなく、それがラジオだという人も多いと思う)。 そして、『ボピーとディンガン』や『ショコラ』のカンガルー、あるいは僕にとってのくま吉のような幼かった頃の想像の友だち。 子供向けの作品っていうのは、子供と、そういう子供時代を経てきている若者や大人が思い返し楽しむことができるわけだから、観客層は広いよなと思う。『千と千尋の神隠し』も『ハリー・ポッターと賢者の石』もその観客層の広さがそのまま動員実績を上げることに繋がっているのだろうし。
どうしてこういう書き出しなのかというと、今日『スパイ・キッズ』という映画を観て来たのだ。かつて名うてのスパイだった両親が久しぶりの任務の途中に悪の組織に捕まってしまい、2人を助けるために立ち上がった子供たち――口が悪くてしっかり者の姉とぐずでドジな弟――の活躍を描いた映画。もちろん、子供はものすごく楽しめる映画なのだけれど、子供向けの作品というわけではなくて、やっぱり間口が広い。素直に笑えて、面白かった。
映画の中では子供たちがSFXやCGの進歩の結果でもある魅力的なスパイ道具を活用していて、そういえば子供の頃こういうメカやグッズがものすごく好きだったよなとか思って、そしてピチカートの曲のことを思い出したのだ。 子供の頃のある種の感覚って、もちろん随分と遠ざかっているのだけれど、確実に過去に体験しているものなので、そういうシーンを見たり音楽を聴いたりするとあっという間に思い出せてしまう。一瞬のうちに。 ファミリーが多かった映画館の中でも、近くに座っていた子供がいちいち「おお!」とか「わあ!」って、小さな声を挙げていたのだけれど、同じ場面で僕も「おお!」とか「わあ!」って思っていたし。 基本的には同じなのだ。 もちろん、僕は大人なので口には出さなかったのだけれど。
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今日は今月着任したばかりの新しい同僚と待ち合わせて買物に出かけ、それから遅い昼食を一緒に食べた。 買物ではタワーレコードでCDを3枚とDVDを1枚購入する(カレンダーをもらった、年末っぽいと思う)。 そして、同僚と別れた後でひとりで映画館に行って映画を観てきた。 16時頃だったのだけれど、観たい映画がその時間帯にやっていなかったので、ちょうど着いたときにすぐはじまることになっていた『バンディッツ』を観る。ブルース・ウィルスが主演の銀行強盗たちのストーリー。最後の方にどんでん返しがある、いかにもハリウッド的な作品。 そして、まさに気が向いたということなのだけれど、そのままレイトショーまで、合計で3作品観てきた。 2作目が『スパイ・キッズ』。上で少しふれているけれど、面白かった。『スパイ・ゲーム』というロバート・レッドフォードとブラッド・ピットが共演している映画もあるのだけれど、それを間違って入ってしまう人っていないのだろうか? いないか。 3作目が『ムーラン・ルージュ』。1900年のパリを舞台にした、めくるめく音楽の洪水で語られるラブ・ストーリー。 1日で3作品も連続して映画を観たのは生まれて初めてなんじゃないかと思う(映画祭を除いては)。最後の方は結構疲労していたような気もするのだけれど、それでもどれも楽しかった。ちなみに、『シュレック』が観たかったのだけれど、ちょうどよい時間にはやっていなかったので、またの機会にする。 そして、23時56分の電車に乗って部屋に帰ってきた。 今日予定していた大掃除は明日のみに変更。
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29日は日帰りの予定だったのに、結局30日の午前4時前に送ってもらって部屋に帰ってきたのだけれど、その途中、うとうとしながら見上げていた空には、ほとんど満月に近い月が見えていた。この数日は年末らしく連日帰りが遅く朝が早くてその結果として睡眠時間がかなり短いことになっていて、かなりかなり眠たかったのだけれど、年末がほぼ満月だということを見ることができたのは、意外とおもしろく思えることだった。 逗子からの帰り道、有料道路を走っていて、時間のせいかまだ渋滞ははじまっていなくて、僕は助手席に乗っていたのだけれど、今年一年は早かったなと、この3日間で30回くらい思って5回くらい実際に口に出したことをやっぱりそのときにもぼんやりと思っていた。 そうしたら運転していた人には申し訳ないけれどうとうととしてしまったようで、気がつくと車は僕の部屋のすぐ近くの坂道を下っているところだった。 いつものようにコンビニの前で降ろしてもらって、「よいお年を」って挨拶を交わす。 年末の一時期だけ、挨拶が「よいお年を」に変わるけれど、そういうのはいいなと思う。 1年の終わりは、様々な角度から、たくさんのやり方でその地点を知らせてくる。 それは街の装いであったり、仕事納めだったり、あるいは忘年会や、テレビからだったりする。 そして、そういう押し寄せてくる既成事実を受け入れて、気持ちを年末に合わせていくのだ。 個人的には、今年はばっちり年末に周波数を合わせていたりする。
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お知らせ
Text Sun Set【Days】は、31日にも更新します。
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