Sun Set Days
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2004年02月09日(月) |
『ラブ・アクチュアリー』+『EQリーダーシップ』 |
今日は休日。昨晩は自分でも気がつかないうちに眠っていたらしく、起きたら机を置いてある部屋の電気がついたままだった。記憶はないのだけれど、ちゃんとベッドで眠っているのだからすごいと思う。 そういえば、昔の知り合いに酔っ払って帰ってきて、起きたら廊下だったという人がいたけれど、それは「ドラマみたいな現実」の中でも、あんまりよくないほうの再現だよなと思う。身体の節々も痛かったみたいだし。
とりあえず電気を消して、出掛ける準備をする。せっかくの休日なので、映画を観に行こうと思っていたのだ。 外に出ると、快晴というわけではないのだけれど晴れていて、思いがけず暖かかった。 iPodで音楽を聴きながら、近くのバス停まで5分ほど歩く。
映画は10時過ぎからの『ラブ・アクチュアリー』を観た。『フォー・ウェディング』好きとしては、その脚本家がはじめてメガホンを取った作品ならぜひ観たいと思ったのだ。 映画はとても面白かった。これは19人の様々なラブ・ストーリーからなる群像劇なのだけれど、見終わった後に気持ちが暖かくなるようないい映画だった。最初の導入部のシーンからしてかなり魅力的で、物語にすんなりと入り込むことができる。
また、それぞれのラブ・ストーリーも独身でハンサムな英国首相が庶民派のお茶くみ秘書にひと目惚れをするエピソードや、恋人を弟に寝取られたミステリー作家が傷心を癒すために訪れた南仏の別荘地で、メイドとして働いているポルトガル人女性に言葉が通じないまま惹かれていく……といったロマンス度の高いものから、同じ会社の同僚に2年7ヶ月もの間片思いをしている女性のエピソード、親友の新妻に恋をしていたナイーブな男性のエピソード、さらには長い結婚生活におとずれた夫の浮気疑惑にショックを受ける妻のエピソードなどの、身近にもありそうな光景まで多岐に渡っている。他にも、最愛の妻を不治の病でなくした男が妻の連れ子と交流を重ねていくエピソードや、落ちぶれた老いぼれロックスターとマネージャーの友情物語など、男女の愛以外の愛もたっぷりと描かれている。 つまりは、もう盛り沢山なのだ。 その様々な愛のエピソードが、微妙に重なり合っている登場人物たちを交互に描きながら少しずつ進んでいく(多くの登場人物たちが実はちょっとした関係で繋がっているということを知るのは、群像劇の愉しみのひとつだ)。しかもそれぞれのエピソードの中に、監督お得意のウィットにとんだ演出やシーンがたくさんあり、思わず嬉しくなってしまう。たとえば、最初の方の結婚式でのちょっとした演出は思わずにやけてしまうものだし、老いぼれロックスターの過激発言には何度も笑ってしまう。僕はいまだに『フォー・ウェディング』で友人の結婚式のときにヒュー・グラントがしていたようなスピーチってウィットに富んでいるよなと思っているのだけれど、この作品でもそんなふうに印象に残るような会話やエピソードがたくさんあるのだ。
個人的に好きなエピソードは、ミステリー作家のポルトガル人女性とのエピソードと、親友の妻に恋している新進画家のエピソード。ただ、この映画を観た人は、それぞれ好きなエピソードが違っているのだろうなと思う。パンフレットに書かれていた「世界がどれほど暗くなろうとも、人生のほとんどの出来事は愛に関係している」という監督の言葉通り、愛についてのささやかなエピソードをいくつも切り取って見せたこの作品は、多くの人に普段はあんまり意識しないことをさりげなく思い出させるような気がする。
この映画は、どこにでもいるような人たちの愛のエピソードを描いているけれど、周囲の人たちのなかにも同じとは言わなくても魅力的なエピソードがたくさんあるのだろうなと思う。もちろん、たとえば同僚が奥さんに囁いている(かもしれない)愛の言葉を僕は知らないし、年配のパートさんの若い頃の激しい恋のエピソードも知らない。そういう話は基本的にはしないものだ。ただ、それでもどこにでも、誰にでもそういったエピソードがあって、そう考えてみるとたしかに世界に愛は溢れているのだろうなと思う。 それこそ、多くの人がきっと「ドラマみたいな現実」を再現しているのだ。 普通の日々を送っているように見せつつも。
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映画を観終わった後、近くにある大きな公園に散歩に行ってきた。まだ12時過ぎだったし、とても暖かかったのだ。 ゆっくり30分くらいかけて公園を歩いて、ベンチに座ってカバンの中に入れていた本を読む。 10分くらい読んでいたらさすがに身体が冷えてきたので、公園を出て近くにあるカフェに入った。 ホットのカフェオレを飲みながら、本の続きを読む。
『EQリーダーシップ』読了。ダニエル・ゴールマン、リチャード・ボヤツィス、アニー・マッキー著。日本経済新聞社。 リーダーの本質や結果を出すリーダーシップということについて、EQが重要なものであるということについて書いた本だ。 序文には、「リーダーシップとは、気持ちに訴える仕事なのである。」と書かれている。 確かにそうなのだと思う。これまでの上司を振り返ってみたときに、たとえば数字を示してだからこうしなさいというような上司よりも、目標を熱く語り、ビジョンに向かってこうしようというようなスタンスの上司の方が魅力的に映ってきた。リーダーと言うのがチームや組織を導き、共通のビジョンの達成に向かって邁進させるものであるのなら、やはり感情に働きかけ、モチベーションを高める手法の方が有効な方法のはずだ(もちろん、それでいて数字を踏まえてというのが大切だけれど)。
本書は、様々な組織のたくさんの人物たちへのインタビューや調査結果などを通じて、6つのリーダーシップスタイルを明示し、それを活用してのEQリーダーへの道を提唱し、最終的にEQレベルの高い組織作りを説く。文章はやや読みにくいけれど、書かれている内容は有益なものだ。特に、分類は分類のための分類になってしまう危険性はあるにしても、物事を大まかに理解するためには役に立つし。
その分類では、リーダーシップスタイルは6つにわかれている。それはさらに大きく2つにわかれ、前向きなスタイルと危険なスタイルということができる。前者が「ビジョン型」、「コーチ型」、「関係重視型」、「民主型」で、後者が「ペースセッター型」と「強制型」だ。「ビジョン型」が最も効果が高く、「強制型」が最も危機に陥りやすい。ただし、もちろんひとりがひとつの型しか使えないということではなく、様々なスタイルを併用していくことが重要でもある(優秀なリーダーは臨機応変に様々なスタイルを使い分けている)。また、組織の段階や現状によって、場合によっては「ペースセッター型」が大きな効果を上げる場合もある。 そして、EQは先天的な要素だけではないのだと説明している。EQは学習によっていくらでも、いつからでも改善できるものなのだ。そのために、本書では5つのステップを用い、その改善のための方法について説明している。そうすることによって、まず個人がリーダーシップEQを得られるようにしていく。 個人としてEQリーダーシップを発揮したら、次は組織への適用ということになる。組織は基本的にはリーダーの性質に大きく影響を受けるため、順番としてはそのようなものになるのだ。
大切なのは、理想(ビジョン)を描き、現実をしっかりと認識し、個人でも組織でもそこに到達するために、どのようなスタイルを選び実行するのかということだ。先日、上司の上司から5月にまたまた転勤し今度は店長になるからなと内々示を出されたのでこの本を手にとってみたのだけれど、いろいろと考えさせられる内容だった。
気になったところをいくつか引用。
気分がいいと、人は最高の能力を発揮する。気分がいいと頭の回転が速くなり、情報の理解力が上がり、複雑な問題にも正しい判断を下すことができ、考え方も柔軟になる。明るい雰囲気のもとでは、人は他人や物事をより前向きに見ることができる。そうなると、自分の目標達成能力についても楽観的に考えられるようになり、創造性や決断力が向上し、他人の役に立とうという意欲も高まる。(28−29ページ)
「自己認識」とは、自分の感情、自分の長所や限界、自分の価値観や動機について深い理解を有している、ということだ。自己認識のしっかりしている人は、現実的だ。自分を過小評価することもないし、根拠のない楽観に酔うこともない。さらに、自分について正直だ。あるがままの自分を隠さない。自分の短所を笑ってみせる余裕がある。(……)目にはつきにくいが、自己認識の有無を最も雄弁に語るのは、自己省察や沈思黙考の習慣があるかどうかだろう。自己認識に優れた人は、たいてい自分一人で思索する時間を持ち、よく考えてから行動に移る。衝動的な対応をしない。(57−59ページ)
最近よく聞く「クール」という言葉は、もともとアフリカ系アメリカ人のジャズ・ミュージシャンが当時の人種差別に対する激しい怒りを音楽にぶつけながらも社会的には激情をコントロールしている姿勢をさして使われたものだ。(68ページ)
人材育成にかかわる専門家たちは、何十年も前からこの傾向に頭を痛めてきた。トレーニングを受けて意欲満々で帰っていったものの時間がたつにつれて意欲が後退してしまう実例をさんざん見ているからだ。トレーニングがもたらす変化はたしかに本物なのだが、それが長続きしない。だから「ハネムーン効果」と呼ばれる。(132ページ)
学習のプロセスを要約してみよう。次のような段階を経て、リーダーは変化していく。
●第一の発見 理想の自分――自分はどんな人間になりたいか? ●第二の発見 現実の自分――自分はどんな人間か? 長所は? 短所は? ●第三の発見 学習計画――どうやって長所を伸ばし、短所を克服するか? ●第四の発見 新しい行動、思考、感情をマスターできるまで試行錯誤と反復練習 ●第五の発見 変化の努力を支援してくれる人間関係を作る (147ページ)
煮えたった湯の中にカエルを放りこめば、カエルは本能的に飛び出そうとする。ところが、鍋に水をはり、そこにカエルを入れて少しずつ水の温度を上げていくと、カエルは水が熱くなっていくのに気づかず、沸騰するまでじっとしている。そして茹であがってしまう。決まりきった日常や習慣の積み重ねにどっぷり浸っているリーダーだちも、この茹でガエルとたいしてちがわない。(164ページ)
集団はEQを発揮できるかぎりにおいて個人より優れている、ということだ。集団のEQにはメンバー全員のEQが反映するが、リーダーはとくに影響力を持っている。感情は伝染性があり、メンバーはリーダーの気分や行動に特別な注意を払う。したがって、集団の雰囲気や感情的現実(チームの一員でいることをどう感じるか)を決めるのは、リーダーである場合が多い。協力体制の構築に長けているリーダーは集団の共鳴を高いレベルで維持し、集団の意思実現のために皆が努力する雰囲気を醸成することができる。そういうリーダーは、集団が抱える課題に目を向けつつ、一方でメンバーの人間関係にも注意を払うことができる。当然、職場には友好的・強調的な風土が生まれ、メンバーは将来に向かって前向きな見通しを抱くようになる。(220ページ)
●組織の現状を無視して、人間さえ教育すれば制度や文化はおのずと変革プロセスを支持するようになるだろう、と考えてしまう。 ●職場の規範やそれを取り巻く企業文化を無視して、人間だけを変えようとする。 (288ページ)
共鳴型リーダーは、協調を呼びかけるべきとき、ビジョンを提示すべきとき、傾聴すべきとき、命令を下すべきときを知っている。こういうリーダーは、自分の感覚に耳を傾けて大切なことを察知する能力を持っている。また、部下たちの価値観と共鳴しうるミッションを提示する能力を持っている。こういうリーダーは自然に人間関係を育み、噴火しそうな問題をすくい上げ、集団にシナジーを起こすことができる。彼らは部下のキャリアに心を砕くので熱烈な忠誠の対象となり、集団の価値観を凝縮したミッションを提示して部下から最高の力を引き出すことができる。(307ページ)
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お知らせ
『ラブ・アクチュアリー』は劇中でかかる様々な音楽もぴったりで、そんなところもうまいのです。
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