猫をかぶった仔猫の日々

2001年09月04日(火) 言ってはいけない事、伝えなくてはいけない事

私は今年の4月に義父を亡くした。
大好きだった義父・・・死に目に立ち会えたことは
良かったのかもしれないが、やはり見るに耐えるものがあった。
義父は亡くなる半年前、狭心症の手術をするために、入院した。
一週間で退院できると何一つ不安も持たず入院した。
それなのに普通では考えられない結果になってしまった。
亡くなるはずがない死に方をしたのだ。
そのことに対しては家族全員、今でも後悔している。
あの病院さえ行かなければ・・・
でもそんなことを思っても義父は帰っては来ない。
争いごとが嫌いだった義父の意思を尊重して、私達は気持ちを抑えた。

私の会社では、親族が亡くなったりするとメールでお知らせをする。
私は社員ではなく派遣として会社で働いていたので
そのようなお知らせは公表されなかった。
しかしそのようなうわさは回るものだと思い込んでいた。
主人が喪主をした関係でしばらくの間、会社をお休みして
いざ出勤となった。

同じ派遣社員の方がある程度、周りの人に知らせてくれたので
部内の人はそこは知っていた。
これは強要することでないのだが、私の部署の人は知っているはずなのに
お通夜にも来ず、知らん顔だった。
そのせいか、久しぶりに出勤した私に対して目を合わせることも
言葉を交わすこともしなかった。
それだけの関係と思えば気が楽になったのだが、とても悲しかった。
でもそれは私の中の感情だけで抑えられることなので良かった。

私がお休みをいただく時、担当の課長に電話で連絡を入れた。
その時、課長はこう言った。
『他の人は知らないけど、私はお通夜に行くから』
これは、この状況の私に言うべき言葉なのか?
そして課長は誰にも知らせることなく、私は会社に復帰した。
会社に行くと他部署の人は事情を知らないため私にこう言った。
『仔猫ちゃん、こんなに長く休んでハワイでも言ってきたの?』
近くに事情を知っていた方がいたのだがあわててその人を見た。
私は隠すことでもないので『義父が亡くなったもので』と言った。
『ハワイ』など言ってしまった人は事情を知らなかったので
ある意味しょうがないと思う。
しかし、そうゆうことを言ってしまったことで、その人はとても困った
顔をしていたのを今でも忘れない。
そしてトイレに行くと女子社員の方にまた同じ事を言われたので
ここでも正直に説明した。
そしたら彼女は『そんなに大変なの?』と私に聞いた。
知らないにせよ、一般常識を知ってる人ならそんなこと言わないはずだ。
そこに同席していた方が逆にあわててしまい
『お嫁さんは大変なのよね』とフォローをしてくれた。

人には言いにくいことがある。しかし伝えなければいけない事がある。
伝えなかったことによって、嫌な気持ちになったり、困ったりしてしまう。
そして言ってはいけないこともある。
言葉って簡単に発せられるが、実はとても難しいことだなと感じている。
言ったことに対して、訂正するのが難しいものだから。
そして言ったこと、言わなかったことによって後悔するものだから。

義父が死に際、私達に伝えたかったことが沢山あったと思う。
しかし、もう脳に酸素がいっていなかった為、何も話すことが
出来なかった。
もっと話したかった、しかし言葉ではなく違うものが伝わってきた。
義父が亡くなったことで私は何か大事なものをもらった気がした。

お父さん、ありがとう。これからも見守っていてください。


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