大阪に舞い戻って一年。
失ったのは目指していた業界への希望と、バイクに乗っている自分と、小説家への可能性と、好きな女の子と。
得たものは・・・・・・・・・・・・・、想い出?
とりえず今あるのは、苦しい生活と面白くないアルバイトと動かないバイクと誰とでも代替出来る楽しい先輩という関係。 つまり、仕事と趣味と女と、全てを手に入れようとして全てを失ったわけです。
彼女ははっきりと言いました。 他の人たちと同じだと。 一緒にいれば楽しいし、いなくなれば寂しい、その程度の存在でしかないとはっきり僕に告げました。 僕だけが特別なわけじゃないと、だから僕が望むような事は起こらないと、はっきり告げました。 あんなことを言った口で、あんな態度を見せておいて。
ああ、いい夢を見させてもらえました。 これ以上の恨み言は言わないでいましょう。 彼女を嫌いになりたくないし、彼女を嫌いになるような自分になりたくないし、彼女に嫌われたくないし、人を嫌うような彼女にさせたくないですから。
だから、もうこんな生活はやめようと思うのです。 でも、それなりに苦労してやっと築き上げた生活を、また同じように苦労して清算しなければならないのかと思うとうんざりするのです。 しかも、今度はその先に何もないのがわかっていて、苦労しなければならないのです。 ああ、なんて面倒くさいのでしょう。 いつ、どのタイミングでバイトを辞めたいと言えば角が立たないのでしょうか。 親にはなんと言って説明すればいいのでしょうか。 同居させてくれている友人にはなんて説明すればいいのでしょうか。 大学の友人達にはどうやって。 次のアルバイトは何をすれば。 その先の就職は。 また大阪から岡山までバイクを運ぶのでしょうか。 また友人に車を借りるのでしょうか、さしてお礼も出来ないのに。
それよりもなによりも、僕が去ることで彼女が落ち込んだりするのでしょうか。 それくらいでは何ともないくらい僕の存在が軽ければいいのですが、それはそれで哀しいし、でも、それくらい重い存在だと思い上がるとまた過ちを犯してしまうでしょうし。
僕が存在している以上、回避できない哀しみがある事を彼女はいつか理解するのでしょうか。 そのとき、彼女はどう思うのでしょうか。 ああ、なんて迷惑な存在なのでしょう。 僕が動くたびに周囲には影響が及ぶのです、そう何をしても、少しでも動けば、僕は迷惑をかける。 それも近しい人たちに。 彼女にとっては、もはや僕が死ぬことすらも迷惑になるでしょう。 だから、僕は大人しくみっともなくひっそりと生き続けるしかないのです。
僕は間違ったことを言ったね。 愛されることを拒否しているのではなく、僕に愛されることを拒否しているだけなんだね。 ごめんなさい。 なんとか最小限の迷惑ですむように、何かしら方法を考えながら居なくなります。
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