徒然へたれ日記
鈴村 凛音



 スパイラル突発モノ

■スパイラルアニメ派、原作未読の方は要注意(本誌読んでない方も要注意)


 何もしない自分は、嫌だから。



 月臣学園に銃声が鳴り響く。今この学園は、本当に日本なのかと思うような銃撃戦が繰り広げられていた。――呪われた子供達が、命を掛けて。
 外に警察は待機してはいるが、ウォッチャーというものから圧力が掛かって動けないらしい。しかしひよのは外から歩の義姉、まどかがその入って行くのを新聞部の部室から見ていた。ひよのにとって一番安全な場所と言うのは、すべての動向などが伺えるやはりこの場所である。
「……とうとうまどかお姉さんが出動ですか」
 耳からイヤホンを外し、ひよのは溜息をついた。勿論、警察の電話を盗聴していたのである。ひよのにとって盗聴する事など訳はない。どうやってしたかと聞かれたら、もちろん「企業秘密です」と答える事にしている。しかし、今はそのような場合でもなく。
「……鳴海清隆と言う人物は、本当に嫌な感じの人ですね」
 ひよのは思わず呟いた。
 神様気取りでシナリオを書き、そのすべてをそのまま実現させる。いくら先読みに長け、それほどの力を持っていたとしても、苦しんでいる理緒や浅月や亮子、それにカノンやアイズを苦しめてまで、争わせてまで何を望むのか。いや、何を望むのかはひよのの知った事ではないし、今は知りたいとも思わない。何より許せないのは、人の苦しみをなんだと思っているのだと言う事だ。人の気持ちを利用するのが、それほど楽しいのか。
 歩やまどか、それから他のブレ−ドチルドレンの子供達、すべてが清隆を「全能だ」「神のようだ」と絶賛する。ひよのにはそれが理解できない。
 確かに彼は人より出来が良いのだろう。しかしそれならば歩だって同じように才能に長けている。アイズも今や世界的なピアニストだ――たとえ、人殺しであれ。彼らのどこが彼より劣っていると言うのか。
 ひよのに言わせれば、むしろ歩の方が余程人の気持ちを知っていると思う。例え兄が先を行っていたとしても、彼の能力は彼の思うように不良品でも偽者でも何でもない。まごう事なく、彼が生まれながら持って来た能力だ。挫折をし過ぎていつからか自分の信じなくなった歩だが、彼の優しさをひよのは誰よりも知っているつもりだ。
 そう、彼には優しさがある。たとえ、彼が否定しても。
 彼程優しい人を、ひよのは知らない。
「……そんな事言っても、笑い飛ばされるだけですけどね」
 ひよのは苦笑した。よくよく考えたら彼と会って一年も経ってないのだ。けれども、そう確証させるだけの力を、ひよのに見せたのは歩自身だ。毎回毎回情けないくらいにうだうだ言ってはいるが。いい加減、彼は根性を据えるべきだ。
 今回彼に喝を入れるのはまどかではない。清隆の書いたシナリオの唯一のイレギュラー――ひよのだ。
 まどかは清隆が用意した駒の一つ。まどかが歩を助けに入った今のところは、清隆のシナリオ通り。まどかに歩を助け――歩に、カノンを殺させるための起爆剤とさせるために。しかし、歩に手を汚させる気は、ひよのにはさらさらない。
 自分が、自分こそが、清隆を出し抜く事ができる唯一の存在なのだ。
「いつまでもシナリオ通りにはいかせませんよ」
 たまには神様も全能でない事を思い知るべきだ。


 銃撃が、やんだ。


 ひよのは立ち上がってリュックを背負った。
 いくら全能でも、ひよのの存在は関知していないだろう。気付いていても、小娘と切って捨てられているはずだ。だがしかし、ひよのはそんじょそこらの小娘とは訳が違うのだ。ヒロインは弱いなんて、もう昔の話。今からはヒロインがヒーローを助ける時代である。
 いつまでも神に踊らされたままでは溜まらない。今度は、こちらが踊らせる番。
 命を掛けてでも、歩に手は汚させない。
 優しすぎる彼では、心が壊れてしまいかねないから。
「……さあ、狸の化かしあいといきましょうか」
 どこまで対抗できるかは分からないけれど、撹乱させるだけでも上出来である。
 何もしないより、絶対ましだ。
 ひよのが出来る事は、ただひとつなのだから。




 神は全能ではない。歩にその事を知らせられるのは、自分しかいないのだから。






■ひよのが一番
とりあえずひよひよが銃撃戦の間どこにいるのか分からないので、発信機などを受信できる場所にいるだろうなとおなじみの新聞部部室。セリフからして彼女が盗聴もしているのはほぼ間違いないんですけどね。じゃなきゃなんでウォッチャーの会話が彼女の耳に入るのさ。
ひよの、今ちょっととんでもない状況にあるのでね(泣)。(ここから少々ネタバレ警報。見たい方は反転してどうぞ)
この後本誌では(単行本では9巻収録の話)ひよのが肩を怪我している歩の腹に、「うだうだ言ってんじゃねえ!!」と怒鳴りながら殴って、カノンの足留めをしに行くシ−ンになります。それはちょっと前の日記にも書いたんですけど、その足留め方法が……方法が……!(泣)
なんで自分の手首を切るのひよの!?(大泣/←死ぬ恐怖が分からない人間に何を言われても響かないとカノンに言われたので、ならばと自分の手首をナイフでざっくり。歩を信じているからできるといっていたが……血がじわじわ出て出血多量で死んだらどうするの!?)そこまでヒロインがしないと動かないヒーローってどうなの歩!!!! さすがのカノンもびっくりです。こんな度胸が座ってるヒロイン見た事ないです。どうでもいいから歩はやく解決策見つけてよ! でないとひよひよが……お前の為に死んじまうかもしれねんだぞー!!??(泣)
ああ、なんでこんなヘタレが好きなんでしょうねひよの……。もったいない……。

ハイ、もどって参りました(笑)。どうでもいいけど実際第一巻から話の中の時間の流れって、半年くらいしか経ってないんですよね。三年ちょいで半年……いいのか?(笑)

2003年01月31日(金)
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