【読書記録】豊島ミホ「神田川デイズ」

『檸檬のころ』を読んで以来、豊島さんの著作を重点的に読み始めたわけですが、なかなかにクセのある文章をかかれる方だというのが5冊読み終わっての感想です。きっと著者は、ぱっと見は普通の一般人だけど実はとても自分の色を持っていて、冷静に見渡して観察しているような、そんな人なのではかなと思いました。これほど、著者を喚起する作品はなかったかもしれないな……。
さて。著者についてはさておき内容です。冒頭に出した『檸檬のころ』の登場人物は高校生が中心で、高校時代のエピソードでしたが、本作はまさにその大学生バージョンかなというイメージを受けました。高校生はまだ縛りがあって、でもその中での自由を謳歌しているけれど、大学生はそうじゃないし、それだけではいけない。将来がかかってくる頃合でもあるし、それと同時に謳歌すべき年月でもある。そんな年齢の彼らが主人公。児童小説や青春系作家さんならば、こういう展開はないなーとしみじみ思うものがちらほら潜んでいました。雰囲気が、すごく違うんだなぁ。重くてじめじめしていて、だけど梅雨が明けるのが楽しみで…、そんなイメージ。最初はどうなってしまうんだろうとか、タイトルの意味って?と思っていたのですが、なかなか面白かったです。簡単に登場人物紹介。
・さえない男子三人が今日も部屋にこもる。「俺たち、このまんまでいーのかな――」
・入学式。人ごみにまみれて見つけた一人の先輩と現実に、戸惑いが隠せない。「私、わたしは――」
・「大学でははっちゃけた生活するぜ!」…だけど、そこにいる俺って……?
・「最高の映画を撮ろう!」言い切った女子三人組だったが……。
・勤勉にまじめにをモットーにしてきたけど、これでいいのか・私!?
・作家デビューしたのに売れない自分。この先、どうしようかなぁって、漠然と感じている彼は――。
NO.38■角川書店
2008年08月23日(土)

ワタシイロ / 清崎
エンピツユニオン