【読書記録】豊島ミホ「リリイの籠」

東北のとある女子高が共通点のさまざまな女の日常を切り抜いた短編集。女の子もいれば、女性もいるので、あえて女と表記しました。
短編なのに、それぞれがすごく個性がありその色を感じる存在感のある作品たち。みんな好きだな〜。
・銀杏泥棒 退屈で淡々とした毎日。部活で出展するための作品を先生に見せたところ、雷に打たれたような一言が胸に残る。「好きで描くのと好きなものを描くのは違う」。じゃあ、私はいったいなにが好きなんだろう…。>空回りする主人公がいい。うまくつかみ取れないけど、私なりにがんばってる、そうやってでもやっぱりつかめないことに大きく落ち込む姿が成長を感じる。
・ポニーテール・ドリーム タメ口で話しかけてくる、かわいいけどいかにもギャルっぽい生徒が苦手だった。だけど、スカートの丈を注意したあの日、私はふと自分の学生時代を思い出す。地味で勉強だけしてたあのときの自分の姿を――。>夢、だったんだなぁとしみじみ。先生の、自分にはないけど、だけどすごくすごくあこがれていて、でも自分には合わないからと避けてしまうような様子がじわじわ伝わってくる。最後まで読んだときの爽快感が印象的。
・忘れないでね 転校生を長い間続けていた私は、今回もまた別の場所へ流れていくことが出来ると思った――。>思ったんだよね。だけど、そう、その涙の意味があるわけで。調子に乗ってると帰ってくるんだなぁと、やられたなぁと言う感情が渦巻く。
・いちごとくま かわいいものが似合うかわいい私と、くまみたいな女の子くまっちは親友。だけど、私は思ってた…三枝、あんた空気読まなさ過ぎでしょう?それで本当に言いわけ?>上の忘れないでねと同類の感じ。だけど、三枝、最後の最後にそんな鋭い事いうかなぁという気も。
・やさしい人 当時仲がよかった友達よりも、彼女に会ったときのほうが「懐かしい」と感じたんだ。>
・ゆうちゃんはレズ ここは女子高。私はゆうちゃんに告白された。>銀杏泥棒と似ているところがあると思う。誰かを本当に好きでいることは、執着してしまうほどに相手をしっかりと見つめることなのか!と感嘆。だから、この作品がすきだった。一生懸命にならざるを得ないほど、人を好きでいる事自体は、性別関係なくあるものだと思う。この点では、私はゆうちゃんと違うのだけど…。

どれも30pで展開してるんだなぁと、改めて感嘆しました。ぎゅっとまとまっていて読後もよく、素敵な作品集でした。後半になるにつれて、紹介文が短くなるのは、それが一番的確だと思ったからなのです…。NO.64■p216/光文社/07/12
2008年11月12日(水)

ワタシイロ / 清崎
エンピツユニオン