【読書記録】「恋のかけら」

かけら…こういう意味か〜!と思うような作品たちでした。書き手によって解釈はちょっとずつ違いものの、ひっそりきらきらと輝いていて、素敵でした。好きだったものをかいつまんでご紹介。(掲載順)

・山崎ナオコーラ「電車を乗り継いで大人になりました」
お名前は存じていたのですが、こんな文章を書く方なのだなぁと知りました。条件で人を好きになるわけじゃないからこそだろうなと思うと同時に、だけど何から何まで無意識に気に障ってしまう相手を選べるかというと微妙。(作中では無意識ではないようですが…)最後、「好きになれたかもしれない」という言葉のあいまいな感じで終わるのがよかったなと思いました。ただ、その意味は「最初から枠にはめた見方だけではなく、もっとちゃんとその人を見たら、その人のいいところがみつかるかもしれない」という趣旨だったと解釈しました。これがもし直球で、異性としていつか好きになれるかもという意図ならば、話は変わってきてしまうのですが…。

・南綾子「雪女のブレス」
さばさばしているようで、ほんの少しの執着(ほんの少しでも、執着というものの存在感は大きいのです)が入り混じった感じが絶妙だなぁとほぅっとため息。主人公は、異性への欲求がまったく感じられない女性だが、彼氏はいる。友達のような付き合い方をして五年目の彼氏が。手玉に取られたような展開が心地よく、自分の欲求について考えて、そして実際に話をして、ちょっとずつ変化していく主人公の気持ちを追うのがとても楽しかったです。この展開は、どこかで――と思っていたら、この方、女による女のR18〜の第四回大賞受賞者ということで、けたけた笑ってしまいました。(ここ一年でずぼっとはまった豊島さんも、この文学賞出身なのです)思わず、こうなったらR18文学賞受賞者を追っかけてみようかと思った作品でした。

・豊島ミホ「銀縁めがねと鳥の涙」
そして豊島さん。この本も彼女目当てで読んで、そしてしっかり着地してくださった!拍手を送りたいと思います!豊島さんの近年の作品は、空気感・言葉にならない気持ちという、漂うものの描写が抜群にうまくなったと思います。この作品も、その空気があるからこそ成り立つもので、ぐっとつまったり、呼吸も出来ないほどの衝撃を受けたり、そして最終的にはそれをステップに羽ばたくであろう様子がとても魅力的。写真についての描写もとてもしっかりしていて、重みがありました。「これ、スナップでしょ――」
NO.65■p202/幻冬社/08/08
2008年11月15日(土)

ワタシイロ / 清崎
エンピツユニオン