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みかんのつぶつぶ DiaryINDEX|past|will
![]() また来ん春と人は云ふ しかし私は辛いのだ 春が来たつて何になろ あの子が返つて来るぢやない おもへば今年の五月には おまへを抱いて動物園 象を見せても猫(にやあ)といひ 鳥を見せても猫(にやあ)だつた 最後に見せた鹿だけは 角によつぽど惹かれてか 何とも云はず 眺めてた ほんにおまへもあの時は 此の世の光のたゞ中に 立つて眺めてゐたつけが…… 中原中也:また来ん春 この詩を初めて読んだときには鳥肌がたった。 最後の三行、ここに凝縮されている想いにただただ共鳴するばかりで。 彼は、何を見ているのだろう。 母に代わって私がレンズを向けたときに何かを見上げてた。 照れくさかったのか、 イヤだったのか。 それとももう待ちきれなくて飽きてしまったのか。 どちらにしても写真を撮られるのはイヤだったということか。 この頃にはもう、全く歩けなくなっていた。 抗がん剤も何回目だっただろうか。 記憶が薄れている。
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